1924年2月に録音された音楽
1924年3月は、政治秩序の再編と文化・科学の新しい動きが同時に進んだ月でした。3月3日にはトルコでカリフ制が廃止され、オスマン王家の追放が決まりました。3月8日にはアメリカ合衆国ユタ州のキャッスル・ゲート炭鉱で爆発事故が起こり、多数の犠牲者を出しました。3月20日にはアメリカ合衆国ヴァージニア州で「人種的完全性を保持するための法律」(Act to Preserve Racial Integrity)が成立し、人種登録と結婚規制が制度化されました。3月25日にはギリシャ議会(Hellenic Parliament)が王制廃止を宣言して第二共和政へ移行し、3月29日にはパナマのバロ・コロラド島(Barro Colorado Island)で新しい熱帯研究施設が開所しました。文化面では、3月1日にウォルト・ディズニー(Walt Disney, 1901–1966)の《アリスの海の日》(Alice’s Day at Sea)が公開され、実写とアニメーションを組み合わせた初期映画シリーズの展開が本格化しました。
この月の確認されている録音:0曲
1924年2月の録音に関する情報のまとめ
1924年3月の録音業界では、ラジオとの結び付きが強まりつつも、主要各社の録音業務は継続していました。3月号の『Radio Age』では、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)が自社放送局WABUを通じて原盤制作中の演奏を放送する構想を持っていたこと、コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Company)が放送局WEAFを使って新譜の先行放送を進めようとしていたことが報じられています。さらに3月12日には、ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)とラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ社(Radio Corporation of America)の提携が公表され、レコード会社と放送事業の結び付きはいっそう明瞭になりました。その一方で、3月の録音日データにはヴィクター、ブランズウィック、コロムビア、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)、スター・ピアノ社(Starr Piano Co.)のジェネット・レコード(Gennett Records)、ジェネラル・フォノグラフ社(General Phonograph Corporation)のオーケー・レコード(OKeh Records)の月内録音が確認でき、各社が通常の新譜制作を止めていなかったことがわかります。
ヴィクター
ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)は、3月号の『Radio Age』で、自社放送局WABUを通じて原盤制作中の演奏を発売前に放送する構想が報じられていました。録音面でも、3月3日には「For You Alone」「Love Is Mine」が、3月26日には試験録音として「The Bird and the Babe」などが確認でき、3月の初旬から下旬まで録音業務を継続していたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Radio-Age-20s/Radio-Age-1924-03.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=MatrixNumber&date=1924-03-03
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1924-03-26
ブランズウィック
ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)は、1924年3月12日にラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ社(Radio Corporation of America)との提携を公表し、ラジオ受信機を組み込んだブランズウィック製品の展開と、自社録音アーティストの放送利用を進めました。録音日データでも、3月19日にカール・フェントン管弦楽団(Carl Fenton’s Orchestra)による「Scherzo」「“No” Means “Yes”」が確認でき、販売戦略の転換と録音活動が同月内で並行していたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Radio-World/20s/24/Radio-World-1924-Mar-22.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Station-Albums/Networks/NBC-Annual-Reports/RCA-Annual-Report-1924.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=MainTalentDisplay&date=1924-03-19
コロムビア
コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Company)は、3月号の『Radio Age』で、放送局WEAFを通じて新譜を発売前に放送する計画が報じられています。録音日データでは、3月24日にフローレンス・マクベス(Florence Macbeth, 1881–1949)の録音が確認でき、3月26日にはウィリアム・A・ケネディ(William A. Kennedy, 生没年不明)による「When Shall I Again See Ireland?」が見えており、放送利用を意識しながら通常の新譜制作も続けていたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Radio-Age-20s/Radio-Age-1924-03.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=MainTalentDisplay&date=1924-03-24
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1924-03-26
エジソン
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、3月25日にメリー・スパークラーズ(Merry Sparklers)による「There’s Yes! Yes! in Your Eyes」「Lazy」などが録音されていました。同日の一覧には英語圏流行曲以外の題名も並んでおり、3月下旬の時点で複数の市場を意識した録音を続けていたことがわかります。
ジェネット
スター・ピアノ社(Starr Piano Co.)のジェネット・レコード(Gennett Records)では、3月19日に「The Darling Girl from Clare」が、3月22日にはアンソニー・シャプティニ(Anthony Shaptini, 生没年不明)による「Ya Gameel Ya Nagaf」「Bani Watani」が録音されていました。1924年3月の時点で、同社が英語圏向け作品に加え、民族系レパートリーも録音していたことが確認できます。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=MainTalentDisplay&date=1924-03-19
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?date=1924-03-22
オーケー
ジェネラル・フォノグラフ社(General Phonograph Corporation)のオーケー・レコード(OKeh Records)では、3月付録音としてサラ・マーティン(Sara Martin, 1884–1955)とシルヴェスター・ウィーヴァー(Sylvester Weaver, 1896–1960)による「Poor Me Blues」、オーケー・シンコペーターズ(OKeh Syncopators)による「Why Did I Kiss That Girl?」などが確認できます。月末時点でもブルースやジャズ/ダンス系の録音を継続していたことがわかります。
