1919年4月に録音された音楽
1919年4月は、第一次世界大戦後の国際秩序づくりと、各地で噴出した政治的緊張が同時進行した月でした。4月10日にはメキシコ革命の指導者エミリアーノ・サパタ(Emiliano Zapata, 1879–1919)がモレロス州チナメカで殺害され、革命の一時代が大きく転換しました。4月11日には上海で大韓民国臨時政府(Provisional Government of the Republic of Korea)が成立し、日本統治下の朝鮮独立運動は亡命政府の形をとります。4月12日にはワルター・グロピウス(Walter Gropius, 1883–1969)がワイマール国立バウハウス(Staatliches Bauhaus in Weimar)の発足を正式化し、戦後の芸術と工芸教育に新しい方向を与えました。4月13日にはアムリトサルでジャリヤーンワーラー・バーグ虐殺(Jallianwala Bagh massacre)が起こり、イギリス領インド帝国支配への反発を決定的に強めます。4月28日にはパリ講和会議(Paris Peace Conference)で国際連盟(League of Nations)規約が採択され、同じ日にマクック飛行場(McCook Field)では自由落下式パラシュートの陸軍試験跳躍が成功し、政治制度と航空技術の双方で新段階が示されました。
この月の確認されている録音:0曲
1919年4月の録音に関する情報のまとめ
1919年4月の録音関連資料では、既成大手による月次新譜の供給と販売促進が続く一方で、新規参入側では横振れ盤への進出も確認できます。当月そのものに結びつく資料で活動を追えるのは、スター・ピアノ社(Starr Piano Company)、ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)、コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Company)、パテ・フレール・フォノグラフ社(Pathé Frères Phonograph Co.)です。4月の活動を直接示す資料が確認できない企業は、ここでは無理に立てていません。
スター・ピアノ
1919年4月、スター・ピアノ社(Starr Piano Company)は最初の横振れ盤レコードの発行を開始しました。アメリカ議会図書館の録音史年表は、この動きをヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)とコロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Company)が長く保っていた体制への挑戦として位置づけています。4月11日付新聞には、スター蓄音機が「他社盤も再生できる」ことを訴える広告も見え、この時期に機器販売と新しいレコード事業の拡大が並行していたことが分かります。
- https://www.loc.gov/static/managed-content/uploads/sites/6/2017/02/recorded_sound_timeline-2013.pdf
- https://tile.loc.gov/storage-services/service/ndnp/ohi/batch_ohi_lavender_ver01/data/sn88078775/00340580746/1919041101/0553.pdf
ブランズウィック
1919年4月のブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)では、4月7日付の試験録音がアメリカ歴史的録音ディスコグラフィーに残っています。さらに4月8日付新聞では「The New Brunswick」を掲げた広告が確認でき、新型機の市場投入と録音試験が4月上旬に並行していたことがうかがえます。少なくとも当月の同社は、蓄音機販売だけでなくレコード部門の立ち上げ準備を具体的に進めていました。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/mastertalent/detail/109644/Morse_Theodore_F?Matrix_page=11
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=NAN19190408.1.4
エジソン
1919年4月のトーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、4月3日製作のダイアモンド・ディスクが現物資料として残っています。加えて、4月3日と4月25日には「エジソン・ショップ」の広告が出ており、新譜・機械の継続販売が確認できます。4月のエジソンは、ウェストオレンジでの製造と都市部販売店での販促を切れ目なく結びつけていました。
- https://www.thehenryford.org/collections/explore/artifact/278136
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190403-01.1.21
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190425-01.1.17
ヴィクター
1919年4月のヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)では、アメリカ議会図書館の国立ジュークボックス資料に、Victor 18214「Hush-a-bye, ma baby」の1919年4月3日録音が記録されています。販売面でも、4月4日付新聞では「April Victor Records」、4月10日付新聞でも「The April Victor records are now at Beckmann’s」とする広告が確認できます。4月のヴィクターは、録音実務と月次新譜告知が一体となって動いていました。
- https://www.loc.gov/item/jukebox-20956
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190404-01.1.7
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=TSYLWWJ19190410.1.3
コロムビア
1919年4月のコロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Company)では、ルイジアナ・ファイヴ(Louisiana Five)の Columbia A2742 が4月1日録音であることがアメリカ議会図書館の記述で確認できます。販売面では、4月1日付新聞に「Come Here for These New Records」、4月3日付新聞に「Some Columbia Records You’ll Be Glad to Own」という広告が出ています。4月のコロムビアは、録音と都市小売店での新譜拡販を同時に進めていました。
- https://blogs.loc.gov/now-see-hear/2024/07/dog-days-of-summer/
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190401-01.1.14
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190403-01.1.3
パテ
1919年4月のパテ・フレール・フォノグラフ社(Pathé Frères Phonograph Co.)では、4月5日付新聞に各種パテ機とレコードを揃えた販売広告が見えます。さらに4月25日付新聞では、パテ盤が針交換不要で、丸いサファイア球で再生されることが強調されています。4月の資料からは、当月の正確な録音日までは確認できませんが、パテが機械とレコードを一体の商品として販促していたことは明瞭です。
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190405-01.1.4
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190425-01.1.26
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190402-01.1.13
