1922年10月に録音された音楽

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1922年10月に録音された音楽

1922年10月は、第一次世界大戦後の秩序再編と新しい大衆文化の形成が同時に進んだ月でした。小アジアでは10月11日にムダニヤ休戦協定(Armistice of Mudanya)が成立し、ギリシャとトルコの武力衝突は停戦へ向かいました。アイルランドでは10月25日にアイルランド自由国(Irish Free State)の憲法が採択され、国家体制の整備が進みました。イタリアでは10月末のローマ進軍を経て、ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世(Vittorio Emanuele III, 1869–1947)がベニート・ムッソリーニ(Benito Mussolini, 1883–1945)に組閣を命じ、ファシズム政権成立の転機となりました。イギリスでは10月18日に英国放送会社(British Broadcasting Company Ltd.)が設立され、放送が制度的な事業として動き始めました。文化面ではトーマス・スターンズ・エリオット(T. S. Eliot, 1888–1965)の『荒地』(The Waste Land)が『ザ・クライテリオン』(The Criterion)10月号に掲載され、戦後文学の方向を大きく変える作品として登場しました。極東では10月25日に日本軍がウラジオストクから撤兵し、ロシア内戦への外国軍干渉も終息段階に入りました。

この月の確認されている録音:0曲

1922年10月の録音に関する情報のまとめ

1922年10月の録音業界では、10月15日号の『ザ・トーキング・マシン・ワールド』(The Talking Machine World)と、当月の録音日または発売月が確認できるディスコグラフィを合わせることで、各社が秋の新譜更新を進めていたことが分かります。動きの中心にあったのはダンス・オーケストラ盤と流行歌盤で、ヴィクター、コロムビア、ブランズウィック、オーケー、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)、エオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)で、同月の新録または新譜発売が確認できます。とくに「Three O’Clock in the Morning」「When You’re Near」「Are You Playing Fair?」などの流行曲は、同じ時期に複数会社で録音または発売されており、同一の人気曲を各社が別編成で競っていた構図が明確です。

ヴィクター

ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)では、1922年10月17日にジョン・マコーマック(John McCormack, 1884–1945)が「Three O’Clock in the Morning」を録音しています。同曲は同社で同年8月のポール・ホワイトマン楽団版も確認できるため、ヴィクター・トーキング・マシン社が同一の流行曲を編成違いで継続的に扱っていたことが分かります。10月時点でも、有名歌手による声楽盤とダンス音楽系の人気曲が並行して維持されていました。

コロムビア

コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Company)では、1922年10月27日にプリンス・ダンス・オーケストラ(Prince’s Dance Orchestra)が「I’d Build a World in the Heart of a Rose」と「Love Sends a Little Gift of Roses」を録音しています。さらに同年盤のコロムビアA3693にはフランク・ウェストファル楽団(Frank Westphal Orchestra)による「Don’t Bring Me Posies / State Street Blues」が確認でき、当月の時点で同社が新しいダンス盤を継続的に補充していたことが分かります。

ブランズウィック

ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)では、ブランズウィック2341のカール・フェントン楽団(Carl Fenton’s Orchestra)「Sweetheart Lane」と、ブランズウィック2360のベニー・クルーガー楽団(Benny Krueger’s Orchestra)「Come on Home」が、いずれも1922年10月頃の発売として確認できます。10月の資料では、同社がダンス・オーケストラ物を軸に新番号を継続投入していたことが明確です。

オーケー

オーケー・レコード(OKeh Records)では、マーケル楽団(Markel’s Orchestra)による「I Found a Four-Leaf Clover」が1922年10月盤として確認でき、同じくオーケー4715には「I’ll Build a Stairway to Paradise」が収められています。さらに、ヴィンセント・ロペス(Vincent Lopez, 1898–1975)率いるホテル・ペンシルヴァニア・オーケストラ(Hotel Pennsylvania Orchestra)による「When You’re Near」の10月録音も確認でき、同社がホテル楽団系とダンス楽団系の双方で新譜を整えていたことが分かります。

エジソン

トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、1922年10月27日にチャールズ・ドーンバーガー・オーケストラ(Charles Dornberger Orchestra)による「Human Hearts」と、ドーンバーガー・ダンス・オーケストラ(Dornberger Dance Orchestra)による「Only Just Suppose」が記録されています。月末までダンス・オーケストラ作品の新録が続いていたことが確認でき、同社が流行歌系のダンス番号を引き続き録音していたことが分かります。

ヴォカリオン

エオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)では、1922年10月発売として14393から14412付近に新譜が連続して確認できます。チャールズ・ハリソン(Charles Harrison, 1878–1965)の14393、バー・ハーバー・ソサエティ・オーケストラ(Bar Harbor Society Orchestra)の14394、ベン・セルヴィンズ・ダンス・オーケストラ(Ben Selvin’s Dance Orchestra)の14395、カリフォルニア・ランブラーズ(California Ramblers)の14411、バー・ハーバー・ソサエティ・オーケストラの14412がいずれも10月発売として並んでおり、同社が同月にまとまった新譜更新を行っていたことが分かります。