1928年9月に録音された音楽
1928年9月は、電気通信、航空、医学、国際政治、自然災害の各分野で後年への影響が大きい出来事が相次いだ月でした。9月3日にはファイロ・ファーンズワース(Philo Farnsworth, 1906–1971)がサンフランシスコで電子式テレビの実演を行い、11日にはゼネラル・エレクトリック社(General Electric Company)の実験放送で『クイーンズ・メッセンジャー』(The Queen’s Messenger)が放送され、テレビ・ドラマ史の初期を画しました。10日–11日にはサザン・クロス(Southern Cross)がタスマン海横断飛行を成功させ、航空史上の節目となりました。カリブ海域からフロリダへ進んだサン・フェリペ・セグンド・ハリケーン(San Felipe Segundo hurricane)は16日に上陸し、オキーチョビー湖(Lake Okeechobee)南岸で壊滅的な洪水被害をもたらしました。26日には国際連盟(League of Nations)体制下で国際紛争平和的処理一般議定書(General Act for the Pacific Settlement of International Disputes)がジュネーヴで採択され、同月にはアレクサンダー・フレミング(Alexander Fleming, 1881–1955)が黄色ブドウ球菌培養皿上のカビの抗菌作用を観察し、のちのペニシリン研究の起点を築きました。
この月の確認されている録音:0曲
1928年9月の録音に関する情報のまとめ
1928年9月の録音関連企業の動きを見ると、都市部スタジオでの電気録音が続く一方で、南部現地録音、外国語盤の拡充、電気式ラジオ・フォノグラフの販促が同時進行していました。トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)、コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company, Inc.)、オーケー・フォノグラフ社(Okeh Phonograph Corporation)、ブランズウィック=バルケ=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)、ソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Co., Inc.)については、1928年9月の録音または同月の業界誌広告・人事記事で活動を確認できます。
エジソン
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、1928年9月19日にマカルピナーズ(McAlpineers)による「High up on a hill-top」などがニューヨークで録音され、9月25日には同じくマカルピナーズ(McAlpineers)の「Then came the dawn」、さらにゴールデン・ゲート・オーケストラ(Golden Gate Orchestra)による「Get out and get under the moon」が録音されていました。1928年9月の同社は、ディスク録音の新譜制作を継続しながら、ポピュラー系ダンス楽団の録音を定期的に補充していたことがわかります。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1928-09-19
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/matrix/detail/2000160773/N-461-Then_came_the_dawn
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/mastertalent/detail/110664/Kirkeby_Ed?Matrix_page=30
ヴィクター
ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)は、1928年9月にテネシー州メンフィスで南部現地録音を集中的に行っていました。9月4日にはダグラス・ウィリアムズ・フォー(Douglas Williams Four)が「Late hours」を録音し、9月5日と20日にはキャノンズ・ジャグ・ストンパーズ(Cannon’s Jug Stompers)が「Hollywood rag」「Viola Lee blues」などを吹き込んでいます。加えて、同月の業界誌では外国語市場向けの新型 Orthophonic Victrola No. 8-9 も告知されており、1928年9月の同社は地域音楽の現地収録と市場別機種の整備を並行させていました。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/matrix/detail/800019540/BVE-45477-Late_hours
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/talent/refer/43284
- https://archive.org/stream/talkingmachinew24bill/talkingmachinew24bill_djvu.txt
コロムビア
コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company, Inc.)は、1928年9月のニューヨーク録音で民族系・移民系市場向け商品を継続していました。たとえば Columbia W109727「Gånglåtar」は9月録音・22147-F 発売として確認でき、Columbia W109736「The Connaught reel」も同じく9月のニューヨーク録音です。1928年の米国カタログでは、英国側で録音された原盤をアメリカで製造する場合にも販売主体としてコロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company, Inc.)が明示されており、この月の本文表記はこの社名で統一するのが適切です。録音内容から見ると、同社は英語圏向け商品だけでなく、移民・民族系市場向けの言語別録音も継続的に整備していました。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/matrix/detail/2000128678/W109727-Gngltar
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/matrix/detail/2000128687/W109736-The_Connaught_reel
- https://archive.org/stream/columbiarecordca00colu_14/columbiarecordca00colu_14_djvu.txt
オーケー
オーケー・フォノグラフ社(Okeh Phonograph Corporation)は、1928年9月の『ザ・トーキング・マシン・ワールド』(The Talking Machine World)で、カルマン・ベルトルド(Kalman Berthold, 生没年不明)が外国語部門の管理者に任命されたことが報じられています。録音面では、9月20日にクラレンス・ウィリアムズ・オーケストラ(Clarence Williams Orchestra)の「Organ grinder blues」がニューヨークで録音され、9月26日にはクラレンス・ウィリアムズ・ウォッシュボード・ファイヴ(Clarence Williams’ Washboard Five)の「Walk that broad」も録音されました。1928年9月の同社は、外国語盤部門の整備と都市ジャズ/ブルース録音の継続が同時に進んでいました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1928-09.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/matrix/refer/2000209956
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/mastertalent/detail/115231/Frisino_Woody
ブランズウィック
ブランズウィック=バルケ=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)は、1928年9月の『ザ・トーキング・マシン・ワールド』(The Talking Machine World)で、新しいホール・オブ・フェイム盤(Hall of Fame Records)を10インチ75セント、12インチ1ドル25セントで打ち出す一方、Super-heterodyne Model 5 NO と Model “A” Speaker も前面に出していました。録音面では Brunswick E28403「Beloved」が同月ニューヨーク録音として確認でき、1928年9月の同社は、レコード新譜と電気式家庭娯楽機の双方を同時に販促していたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1928-09.pdf
- https://archive.org/stream/talkingmachinew24bill/talkingmachinew24bill_djvu.txt
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/matrix/refer/2000227480
ソノラ
ソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Co., Inc.)は、1928年9月の業界誌広告で「The Glorious Melodon」を単体またはラジオ付きで示し、音響機とラジオを結合した商品群を積極的に訴求していました。1928年の同社は、純粋な蓄音機メーカーの枠を越えて、ラジオ・フォノグラフ一体型の家庭娯楽機市場へ深く踏み込んでいたことがうかがえます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1928-09.pdf
- https://www.radiomuseum.org/r/sonora_pho_a44.html
