Music recorded in January 1929
1929年1月、セルブ人・クロアチア人・スロベニア人王国(Kingdom of Serbs, Croats and Slovenes)では、アレクサンダル1世(Alexander I, 1888–1934)が1月6日に議会政治を停止して王権独裁へ移行し、国内政治の緊張はいっそう深まりました。ベルギーでは1月10日にエルジェ(Hergé, 1907–1983)が『ル・プティ・ヴァンティエーム(Le Petit Vingtième)』でタンタンとスノーウィを初登場させ、20世紀漫画史を代表する連載が始まりました。アメリカ合衆国では1月15日にマーティン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King, Jr., 1929–1968)が生まれ、のちの公民権運動を担う人物がこの月に誕生しています。アフガニスタンではアマーヌッラー・ハーン(Amanullah Khan, 1892–1960)が1月に退位し、政情不安が急速に拡大しました。ソビエト社会主義共和国連邦(Union of Soviet Socialist Republics)ではレオン・トロツキー(Leon Trotsky, 1879–1940)が1月に国外追放され、ヨシフ・スターリン(Joseph Stalin, 1878–1953)体制の固定化がさらに進みました。さらにアメリカ合衆国では1月29日にシーイング・アイ(The Seeing Eye)が設立され、盲導犬育成の制度化が始まりました。
Confirmed recordings this month: 0
1929年1月の録音に関する情報のまとめ
1929年1月の録音業界では、レコード会社とラジオ企業の結び付きがいっそう強まり、家庭用機器の中心も単独の蓄音機から電気式再生機やラジオとの組合せ機へ移りつつありました。その一方で、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)のシリンダー事業はなお継続しており、新旧の媒体が同じ時期の市場に並存していたことが確認できます。
Victor
ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)では、1929年1月4日にラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)との統合計画が両社取締役会で承認されました。同時代誌は、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)の商標「Victor」「Victrola」「His Master’s Voice」が維持されること、そしてカムデン工場の重要性が新体制下でむしろ増すことを伝えています。また同じ1929年のカタログには、セルゲイ・クーセヴィツキー(Serge Koussevitzky, 1874–1951)指揮ボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)によるイーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky, 1882–1971)《ペトルーシュカ組曲》が Victor 6882–6884 として掲載されており、同社が高級クラシック録音の拡充を続けていたことも確認できます。
- https://elibrary.arcade-museum.com/Music-Trade-Review/1929-88-2-SECTION-1/17?q=victor+talking+machine&type=and
- https://archive.org/stream/catalogueofvicto00rcav_0/catalogueofvicto00rcav_0_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/BOOKSHELF-ARH/History/The-Fabulous-Phonograph-1877-1977-Gelatt-1954.pdf
Brunswick
ブランズウィック=バルケ=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Co.)は、1929年1月号の『トーキング・マシン・ワールド・アンド・ラジオ=ミュージック・マーチャント(Talking Machine World and Radio-Music Merchant)』で、Panatrope with Radio の新型組合せ機を大きく広告しました。この月の同時代広告からは、同社が単独のレコード再生機ではなく、電気式蓄音機とラジオを一体化した高級機を年初の主力商品として前面に押し出していたことが読み取れます。
Edison
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、Blue Amberol の末期番号帯になお新作が並んでおり、エルミン・キャロウェイ(Ermine Calloway, 生没年不明)の “Is There Anything Wrong in That” が Blue Amberol 5661、ゴールデン・ゲート・オーケストラ(Golden Gate Orchestra)の “Sweethearts On Parade” が Blue Amberol 5663 として確認できます。加えて、エルミン・キャロウェイ(Ermine Calloway, 生没年不明)の “Is There Anything Wrong in That” は Edison 52519 と結び付くことも後年の録音目録で確認できます。1929年初頭の時点でも、同社がまだシリンダー向けの新規素材を市場へつないでいたことは重要です。
- https://archive.org/stream/Blue_Amberol/DDEBA_djvu.txt
- https://epdf.pub/moanin-low-a-discography-of-female-popular-vocal-recordings-1920-1933-discograph.html
- https://archive.org/stream/brian-rust-jazz-records-free-edition-6/Brian%20Rust_jazz-records_free-edition-6_djvu.txt
