1927年10月に録音された音楽
1927年10月は、映画、記念碑建設、航空、石油開発、国際航空輸送、理論物理学の各分野で、後の時代に大きな影響を与える出来事が重なった月でした。10月4日にはマウントラシュモア国立記念碑(Mount Rushmore National Memorial)で本格的な彫刻作業が始まり、巨大記念碑計画が実施工事の段階に入りました。10月6日にはワーナー・ブラザース(Warner Brothers)の『ジャズ・シンガー』(The Jazz Singer)が公開され、長編映画における同期音響普及の象徴的作品となりました。10月11日にはルース・エルダー(Ruth Elder, 1902–1977)がジョージ・ハルデマン(George Haldeman, 1899–1965)とともに大西洋横断飛行に挑戦し、女性による長距離飛行の話題を世界に広げました。10月15日にはババ・グルグル油田(Baba Gurgur)で石油が噴出し、イラクの石油開発史における転換点となりました。10月19日にはパン・アメリカン・エアウェイズ(Pan American Airways)がキーウェスト–ハバナ間で最初の航空郵便飛行を行い、国際航空路時代の本格化を示しました。10月24日–29日にはブリュッセルで第五回ソルベー物理会議(Fifth Solvay Conference on Physics)が開かれ、量子力学をめぐる議論が世界の研究史に刻まれました。
この月の確認されている録音:0曲
1927年10月の録音に関する情報のまとめ
1927年10月の録音業界は、電気録音の新しさを前面に出す段階から、録音済みレコードと蓄音機をどう組み合わせて売るかという販売競争へ重心が移っていたことが読み取れる月でした。同月の業界誌では、携帯型機、パナトロープ(Panatrope)、アルバム・セット、ラジオとの併売が繰り返し取り上げられ、メーカー本体だけでなく百貨店や地域有力店の動きもはっきり確認できます。
ヴィクター
ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)は、1927年10月の業界誌で携帯型ヴィクトローラの販売好調が明確に報じられていました。また、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)のブルックリン店では、ヴィクターの携帯型機、卓上型機、ヴィクター・マスターピース・アルバム・セット(Victor Masterpiece album sets)を組み合わせた展示が行われており、同社が10月時点で普及型機種と高級アルバム商品の双方を店頭で訴求していたことが確認できます。さらに、ナサニエル・シルクレット(Nathaniel Shilkret, 1889–1982)が同時期に同社の総音楽監督として紹介されており、録音制作と周辺音楽事業の中核を担っていました。
- https://archive.org/stream/talkingmachinew23bill/talkingmachinew23bill_djvu.txt
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1927-85-16/36
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1927-10.pdf
ブランズウィック
ブランズウィック・バルク・コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)は、1927年10月にパナトロープを軸にした実演販売と売場強化を進めていました。J・M・ホフマン社(J. M. Hoffmann Co.)の店舗改装記事では、新しい中二階がブランズウィック蓄音機とアトウォーター・ケント受信機の展示実演に充てられていました。また、テキサス州イーグルパスのM・リスキンド社(M. Riskind Furniture Co.)では、ブランズウィック・パナトロープ、携帯型機、レコードを組み合わせたウィンドウ展示が確認でき、同社製品が地方市場でも強く押し出されていたことが分かります。さらに、ミルウォーキーの展示会記事でもパナトロープが実演の中心機種として扱われており、10月時点で同社が機械とレコードを一体で見せる販売戦略を強めていたことが読み取れます。
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1927-85-16/19
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1927-85-16/26
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1927-10.pdf
コロムビアとオーケー
コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company)と、その傘下ブランドであるオーケー・レコード(Okeh Records)は、1927年10月の業界誌で需要の強さと新譜訴求の両面が確認できます。『The Talking Machine World』では、コロムビアとオーケーのレコード需要がともに好調であることが見出しで示されていました。さらに『The Music Trade Review』1927年10月15日号では、ジョー・ヴェヌーティ(Joe Venuti, 1903–1978)の作品群が最近オーケーとコロムビアのレコードに録音されたと説明されており、10月時点で両ブランドが新録音を販促材料として活用していたことが分かります。
- https://archive.org/stream/talkingmachinew23bill/talkingmachinew23bill_djvu.txt
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1927-85-16/36
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1927-10.pdf
J・M・ホフマン
J・M・ホフマン社(J. M. Hoffmann Co.)は、1927年10月に店舗の大規模改装を終え、新設した中二階をブランズウィック蓄音機とアトウォーター・ケント受信機の展示実演専用に用いていました。一階の事務・展示空間や地下室も再編されており、録音関連商品の販売をラジオや楽器の売場構成と結び付けて拡大しようとしていたことが確認できます。録音関連企業の月次動向をメーカー本体だけでなく主要販売会社まで含めて追うなら、同社は10月の資料で独立して扱える存在です。
C・C・メラー
C・C・メラー社(C. C. Mellor Co.)は、1927年10月の『The Music Trade Review』で、デュオ・アート(Duo-Art)を含む高級楽器需要の改善とあわせて、ヴィクター・オーソフォニック(Victor Orthophonic)およびブランズウィック・パナトロープの代表的取扱店として記されていました。ピアノ中心の有力店でありながら、同月の資料では蓄音機部門も主力商品の一部として位置づけられていたことが読み取れます。
ブルーミングデールズ
ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)のブルックリン店では、1927年10月にヴィクターの携帯型機、卓上型機、ヴィクター・マスターピース・アルバム・セットを組み合わせたウィンドウ展示が行われていました。百貨店の音楽売場が単なる在庫販売ではなく、機械・レコード・アルバムを一体で見せる販促空間として機能していたことを示す事例です。メーカー本体の活動ではありませんが、10月の販売現場を示す具体例として重要です。
- https://archive.org/stream/talkingmachinew23bill/talkingmachinew23bill_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1927-10.pdf
M・リスキンド
M・リスキンド社(M. Riskind Furniture Co.)は、1927年10月のテキサス州イーグルパスにおいて、ブランズウィック・パナトロープ、携帯型機、レコードを組み合わせた展示を行っていました。地方の主要販売会社が、複数の商品種別を一つの視覚的演出にまとめて売場を構成していたことを示す具体例であり、同月の録音関連流通の実態を補う材料になります。
- https://archive.org/stream/talkingmachinew23bill/talkingmachinew23bill_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1927-10.pdf
