1912年10月に録音された音楽

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1912年10月に録音された音楽

1912年10月の世界は、戦争と外交、選挙と大衆政治、前衛芸術と娯楽文化が同時に動いた月でした。10月8日にモンテネグロがオスマン帝国(Ottoman Empire)へ宣戦し、第一次バルカン戦争(First Balkan War)が始まると、バルカン同盟諸国も続き、欧州秩序は急速に不安定化しました。10月18日にはローザンヌ条約(Treaty of Lausanne, Italy–Turkey [1912])が結ばれ、伊土戦争(Italo-Turkish War)は終結し、トリポリタニアとキレナイカをめぐる支配の帰属が変わりました。アメリカ合衆国(United States of America)では、セオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt, 1858–1919)が10月14日に選挙演説直前に銃撃されながら演説を続け、大衆政治の劇場性を象徴する出来事となりました。文化面では10月16日にベルリンでアルノルト・シェーンベルク(Arnold Schoenberg, 1874–1951)の《月に憑かれたピエロ》が初演され、20世紀音楽のモダニズムを示す画期となりました。社会・法制度の面では、ホワイト・スター・ライン(White Star Line)がタイタニック号沈没をめぐる責任限定請願を進め、事故処理は国際的な法的争点へ移りました。娯楽文化では同じ10月16日、ボストン・レッドソックス(Boston Red Sox)がニューヨーク・ジャイアンツ(New York Giants)を破って1912年のワールドシリーズを制しました。

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1912年10月の録音に関する情報のまとめ

1912年10月は、トマス・エジソン(Thomas Edison, 1847–1931)のシリンダー事業が、従来のワックス盤中心からエジソン・ブルー・アンベロール・レコード(Edison Blue Amberol Record)中心へ切り替わる決定的な転換月でした。『エジソン・フォノグラフ・マンスリー』(The Edison Phonograph Monthly)1912年10月号は、ブルー・アンベロールの告知、ダイヤモンド・リプロデューサーの説明、旧ワックス在庫の交換策、新しい機種構成を集中的に扱っており、この月が単なる新製品紹介ではなく、販売制度と再生装置を含む全面的な移行の始点だったことを示しています。後年のアラン・サットン(Allan Sutton)編ディスコグラフィでも、1912年秋の告知は旧ワックス在庫を急速に陳腐化させた節目として整理されています。

ブルー・アンベロールの導入

『エジソン・フォノグラフ・マンスリー』(The Edison Phonograph Monthly)1912年10月号では、エジソン・ブルー・アンベロール・レコード(Edison Blue Amberol Record)が大きく告知され、第一回の新リストは通常盤50点とコンサート盤5点で構成され、番号は1501から始まると説明されています。さらに、出荷遅延の可能性を見込んで「到着次第販売可」とされた点からも、会社側がこの新形式を最優先案件として扱っていたことが分かります。

ダイヤモンド・リプロデューサーと四分型への移行

同号では、エジソン・ブルー・アンベロール・レコード(Edison Blue Amberol Record)の導入によってダイヤモンド針の使用が可能になったことが強調され、アンベローラ(Amberola)系とコンサート機にはダイヤモンド“A”型、アルヴァ(Alva)・トライアンフ(Triumph)・ホーム(Home)・スタンダード(Standard)・ファイアサイド(Fireside)・ジェム(Gem)系にはダイヤモンド“B”型が必要と説明されています。また、1912年10月1日以後のエジソン機は四分型のみへ整理される方針が示され、機械と再生装置の両面で旧来の二分型中心体制が後退したことが確認できます。

旧ワックス在庫の整理策

1912年10月号の交換制度では、従来のレコード購入額に対する10パーセントの交換条件を維持しつつ、さらに機械購入額の5パーセントまで旧ワックス・レコードを返品して信用に振り替えられる仕組みが示されました。これは、エジソン・ブルー・アンベロール・レコード(Edison Blue Amberol Record)が登場すると旧ワックス在庫が一気に売りにくくなることを会社側自身が認識していたためで、後年の解説でも1912年秋は在庫整理策が不可避になった節目として扱われています。

第一回ブルー・アンベロールの収録傾向

第一回のエジソン・ブルー・アンベロール・レコード(Edison Blue Amberol Record)には、《セミラーミデ序曲》、英語版《ファウスト》三重唱、《オーヴァー・ザ・ウェーヴズ》ワルツ、《ラ・パロマ》、《ザ・ロザリー》などが並び、吹奏楽・序曲・室内的器楽・声楽重唱を広く含む構成でした。しかも同じ誌面では学校用レコードへの言及も見られ、単なる流行歌の置換ではなく、家庭・学校・中級クラシック需要まで視野に入れた新形式として立ち上げられたことが読み取れます。