1924年5月に録音された音楽
1924年5月は、戦後秩序の再編と大衆社会の制度化が同時に進んだ月でした。ドイツ国(Deutsches Reich)では5月4日の国会選挙でドイツ社会民主党が最大勢力を保つ一方、左右の急進勢力も議席を伸ばし、議会政治の不安定さが鮮明になりました。5月8日にはクライペダ地域に関する条約(Convention concerning the Territory of Memel)が調印され、バルト海沿岸の帰属問題が整理されました。アメリカ合衆国では5月10日にジョン・エドガー・フーヴァー(J. Edgar Hoover, 1895–1972)がアメリカ合衆国司法省捜査局(Bureau of Investigation, United States Department of Justice)の長官代行となり、5月26日にはアメリカ合衆国移民法1924年法(Immigration Act of 1924)が成立して移民制限が強化されました。科学技術面では5月16日にウォルター・アンドリュー・シューハート(Walter Andrew Shewhart, 1891–1967)が管理図の基礎となる覚書をまとめ、ハワイ島のキラウエア火山(Kīlauea)では5月11日–27日に爆発的噴火が続きました。
この月の確認されている録音:0曲
1924年5月の録音に関する情報のまとめ
1924年5月の録音業界では、新録音の継続だけでなく、西海岸生産体制の整備、蓄音機とレコードを一体で売る販売、流行曲と民族系・外国語系の併売など、各社の性格の違いがはっきり見えます。当月の資料で活動を確認できる企業を整理すると、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)、ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Co.)、コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)、ゼネラル・フォノグラフ社(General Phonograph Corp.)のオーケー・レコード(OKeh Records)、スター・ピアノ社(Starr Piano Co.)のジェネット・レコード(Gennett Records)、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)、エオリアン社(The Aeolian Co.)のヴォカリオン(Vocalion)を挙げることができます。
ヴィクター
ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)は、1924年春の業界報道でカリフォルニア州オークランドの新録音・新プレス工場の稼働準備を進めており、5月には西海岸側の生産体制が実働段階に入っていました。5月22日の録音一覧には《Bianca luce》《Homing》などの試験録音が見え、工場整備と並行して録音活動も継続していたことが確認できます。
- https://sfmuseum.org/hist2/victor.html
- https://sfmuseum.org/hist/gracyk.html
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1924-05-22
ブランズウィック
ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Co.)では、5月15日の録音一覧に《Valse triste》や《Any old time at all》が見え、クラシック寄りの録音と流行歌の録音が同じ月に並行して進められていました。5月末の広告ではブランズウィック蓄音機の音質が強く訴求されており、レコードと再生機の双方を前面に出す販売が続いていました。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1924-05-15
- https://trove.nla.gov.au/newspaper/article/31233845
- https://archive.org/download/brunswickrecordc00brun_0/brunswickrecordc00brun_0.pdf
コロムビア
コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)の5月29日の録音一覧には《The old refrain》などが見え、月末まで新録音が継続していました。1924年5月の同社は、独唱盤や伴奏付き歌唱盤を安定して供給していたことが当月の録音資料から確認できます。
オーケー
ゼネラル・フォノグラフ社(General Phonograph Corp.)のオーケー・レコード(OKeh Records)では、5月29日の録音一覧にシルヴェスター・ウィーヴァー(Sylvester Weaver, 1896–1960)の《Smoketown strut》などのギター独奏盤が見えます。1924年5月のオーケーは、黒人ポピュラー音楽と器楽独奏の商品化を当月も進めていたことが確認できます。
ジェネット
スター・ピアノ社(Starr Piano Co.)のジェネット・レコード(Gennett Records)では、5月10日と5月15日の録音一覧に声楽盤や中東系レパートリーの連作が見えます。1924年5月の同社は、主流の流行歌だけでなく、移民社会向けの録音も継続していたことが読み取れます。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1924-05-10
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1924-05-15
エジソン
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、5月22日の録音一覧に《Adiós》などが見え、ダイヤモンド・ディスク系の録音が続いていました。同月上旬の地方紙広告でも「New Edison Diamond Disc」の販売が確認でき、録音制作と販売網の両面が並行して動いていました。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1924-05-22
- https://trove.nla.gov.au/newspaper/article/255302565
- https://nla.gov.au/nla.news-article255302825
ヴォカリオン
エオリアン社(The Aeolian Co.)のヴォカリオン(Vocalion)は、5月1日と6日の広告で《Apple Sauce》や《Bacchanal (Samson and Delilah)》などを並べ、流行曲とクラシック系作品を同時に訴求していました。5月7日の新聞記事ではヴォカリオン盤に録音したフルート独奏家の紹介も見え、同月も新譜販促と演奏家訴求が続いていました。
- https://trove.nla.gov.au/newspaper/article/16139119
- https://trove.nla.gov.au/newspaper/article/16145703
- https://nla.gov.au/nla.news-article245710408
