1913年10月に録音された音楽
1913年10月は、政治・産業・交通・文化の各分野で、新しい制度や技術が目に見える形で現れた月でした。アメリカ合衆国では10月3日にアンダーウッド=シモンズ関税法(Underwood-Simmons Tariff Act)が成立し、関税引き下げと連邦所得税導入を伴う新しい財政体制が動き始めました。産業面では、ヘンリー・フォード(Henry Ford, 1863–1947)が10月にミシガン州ハイランドパーク工場で移動組立ラインを導入し、自動車の大量生産方式を大きく前進させました。10月10日にはパナマ運河(Panama Canal)建設でガンボア堤防が爆破され、ガトゥン湖とクレブラ切通しがつながりました。同じ10月10日、中華民国では袁世凱(Yuan Shikai, 1859–1916)が正式に大総統へ就任し、メキシコではビクトリアーノ・ウエルタ(Victoriano Huerta, 1850–1916)が代議院を解散して独裁色を強めました。10月14日にはウェールズのユニヴァーサル炭鉱(Universal Colliery)で大爆発が起こり、イギリス炭鉱史上最大級の犠牲を出しました。さらに10月16日にはジョージ・バーナード・ショー(George Bernard Shaw, 1856–1950)の『ピグマリオン』(Pygmalion)がウィーンで初演され、文化面でも後世に残る出来事が生まれています。
この月の確認されている録音:0曲
1913年10月の録音に関する情報のまとめ
1913年10月の録音業界では、秋商戦に合わせて新譜供給、全国広告、博覧会・地方催事での展示が同時に進んでいたことが確認できます。当月の一次資料・同時代業界誌で1913年10月の活動を直接確認できた主要企業は、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)、ヴィクター・トーキング・マシン会社(Victor Talking Machine Co.)、コロンビア・グラフォフォン会社(Columbia Graphophone Co.)の動きは月単位で確認できましたが、他社は1913年10月に確定して結び付けられる同時代資料を十分に確認できませんでした。
エジソン
1913年10月のトーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、ディスク製品への本格移行がはっきり確認できます。『Edison Phonograph Monthly』の1913年通年索引では、10月項目として「Edison Dia. Disc announced and described」「Photos of all Dia. Disc machines」が挙げられており、同月にエジソン・ディスク機と関連機種の告知が前面化していたことがわかります。さらに同じ索引では、9月項目としてアンベローラIV・VIII・Xの導入が示される一方、「All horn type phonographs discontinued in October 1913!」とも整理されており、1913年10月は外付けホーン型から内蔵ホーン型へと販売の重心が切り替わる節目でした。
レコード面では、ブルー・アンベロール(Blue Amberol)の10月発売群が継続して供給されていました。アラン・サットン(Allan Sutton)のディスコグラフィでは、1932番から1943番までが1913年10月発売として並び、たとえば1932番「When I want a little loving」、1939番「The trail of the lonesome pine — Medley two-step」、1943番「There’s a girl in the heart of Maryland」が確認できます。これらは主として1913年6月のニューヨーク録音で、1913年10月時点のトーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)が、新型機の告知と並行してシリンダー新譜の供給も続けていたことを示します。
また、11月号掲載の案内では、新しいブルー・アンベロール通しカタログ Form 2449 が「issued up to and including October, 1913」とされており、1913年10月までの国内通常盤・演奏会用・グランド・オペラ盤に加え、多言語シリーズも整理されていました。つまり1913年10月のトーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)は、機械の更新、新譜供給、目録整備の三つを同時に進めていたと確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1913-Vol-11.pdf
- https://adp-assets.library.ucsb.edu/edison_4m-cyls.pdf
- https://mainspringpress.org/mainspring-press-free-online-discographies/
ヴィクター
1913年10月のヴィクター・トーキング・マシン会社(Victor Talking Machine Co.)では、全国広告と新譜告知が当月資料で直接確認できます。『The Talking Machine World』1913年10月号は、「The Victor Talking Machine Co. inaugurated this month its annual fall campaign in the national magazines featuring Victor records exclusively」と伝えており、同社が10月に全国雑誌を使った秋季販促を開始したことを示しています。さらに同じ10月号には「RECORD BULLETINS FOR NOVEMBER, 1913. VICTOR TALKING MACHINE CO.」が掲載されており、11月売りの新譜群を10月の段階で業界へ提示していました。1913年10月のヴィクター・トーキング・マシン会社(Victor Talking Machine Co.)は、全国広告と翌月新譜告知を組み合わせた典型的な秋商戦体制に入っていたといえます。
コロンビア
1913年10月のコロンビア・グラフォフォン会社(Columbia Graphophone Co.)については、博覧会・地方催事での展示活動が当月資料で確認できます。『The Talking Machine World』1913年10月号には「The Columbia Exhibits at Fairs. The Columbia Graphophone Co. has been much in evidence at fairs during the past few weeks.」とあり、コロンビア・グラフォフォン会社(Columbia Graphophone Co.)が各地のフェアで積極的に存在感を示していたことがわかります。10月の同社は、単なる広告出稿だけでなく、来場者が実機やレコードに触れられる場で販促を行っていたと確認できます。
