1921年5月に録音された音楽
1921年5月は、戦後秩序の再編と社会不安が各地で同時に進んだ月でした。上シレジアでは第三次シレジア蜂起(Third Silesian Uprising)が起こり、ヨーロッパではドイツ賠償を定める1921年5月5日支払計画(Schedule of Payments, May 5, 1921)が示されました。英領パレスチナでは5月1日のヤッファ暴動(Jaffa riots)以後に流血が拡大し、アメリカ合衆国では5月19日に緊急割当法(Emergency Quota Act)が成立して、1910年国勢調査を基準とする移民割当制が導入されました。5月中旬には大規模な磁気嵐が発生して通信障害と広域オーロラ観測が記録され、月末の5月31日にはタルサ人種虐殺(Tulsa Race Massacre)が始まりました。国際政治、法制度、科学技術社会、民族対立、人種暴力が同月に重なって表れた点に、1921年5月の特徴があります。
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1921年5月の録音に関する情報のまとめ
1921年5月の一次資料では、春から初夏にかけての需要回復を見込みながら、各社が価格改定、新譜の月次整理、販売会議、販路再編、店頭販促、外国語盤や国際盤の強化を同時に進めていたことが確認できます。とくにコロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)の国際盤販促、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)の5月向け新譜告知とアンベローラ販促、エオリアン社(The Aeolian Co.)のヴォカリオン(Vocalion)販路拡張、エマーソン・フォノグラフ社(Emerson Phonograph Co.)の専属録音家強化、スター・ピアノ社(Starr Piano Co.)の地域販売網拡張、パテ・フレール・フォノグラフ社(Pathé Frères Phonograph Co.)の価格改定、カーディナル・フォノグラフ社(Cardinal Phonograph Co.)の民族系レコード集中投入は、1921年5月の業界動向として直接確認できます。
コロムビア
コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)は、5月21日に各支店で月例販売会議を開き、夏季商戦に向けた新しい販売計画を共有しました。さらに、5月28日–6月4日を国際レコード部門のノヴェルティ・レコード週間として設定し、店頭装飾と広告を組み合わせた販促を準備しており、5月末時点で国際盤販売を強く押し出していたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1921-05.pdf
- https://archive.org/stream/talkingmachinew17bill/talkingmachinew17bill_djvu.txt
エジソン
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)は、4月15日付の5月向け advance record bulletins で「May Special」を含む新譜を告知していました。加えて、5月15日付広告ではエジソン・ダイヤモンド・アンベローラの低価格と高品質を前面に出しており、同月の同社がディスク新譜案内とシリンダー機の販売訴求を並行して続けていたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1921-04.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1921-05.pdf
- https://archive.org/stream/talkingmachinew17bill/talkingmachinew17bill_djvu.txt
ヴォカリオン
エオリアン社(The Aeolian Co.)のヴォカリオンでは、5月2日付記事でケンタッキー州の流通体制が新たに整えられ、ルイヴィル・ミュージック社が卸売を担うことが報じられました。同じ5月資料では、ヴォカリオン・レッド・レコードの増産を背景に新しい販売運動が始まったことも確認でき、5月は販路拡張とレコード販促が同時に進んだ月でした。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1921-05.pdf
- https://archive.org/stream/talkingmachinew17bill/talkingmachinew17bill_djvu.txt
エマーソン
エマーソン・フォノグラフ社(Emerson Phonograph Co.)は、5月資料でシャーボウズ・リトル・クラブ・オーケストラ(Sherbow’s Little Club Orchestra)を専属録音化し、その最初の盤を特別発売として売り出す方針を示しました。あわせて新しい販売・広告運動を準備していたことも記されており、同社が1921年5月に専属芸術家の拡充を明確に打ち出していたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1921-05.pdf
- https://archive.org/stream/talkingmachinew17bill/talkingmachinew17bill_djvu.txt
ブランズウィック
ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Co.)は、4月末に5月用レコードを貼り込み式で更新できる新しい numerical list を出し、販売店が月ごとの発売情報を継続的に整理できる方式を始めました。5月2日付記事ではダビュークの新しいブランズウィック店の開業も報じられており、5月の同社がカタログ管理と販売拠点整備を進めていたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1921-05.pdf
- https://archive.org/stream/talkingmachinew17bill/talkingmachinew17bill_djvu.txt
スター/ジェネット
スター・ピアノ社(Starr Piano Co.)では、5月6日付記事でニューイングランド支社の新拠点移転と、新規取引先の増加が報じられました。記事には、スター蓄音機とジェネット・レコード(Gennett Records)の取扱契約がこの数か月で増えていたこと、営業組織が販売店を継続的に支援していたことが明記されており、5月は地域販路拡張の月だったといえます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1921-05.pdf
- https://archive.org/stream/talkingmachinew17bill/talkingmachinew17bill_djvu.txt
パテ
パテ・フレール・フォノグラフ社(Pathé Frères Phonograph Co.)は、4月25日発効の価格改定を5月市場に反映させ、パテ盤とアクチュエル盤の一部を85セント帯へ移しました。5月新譜には13点の85セント盤が含まれており、同社が価格調整と月次新譜投入を一体で進めていたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1921-05.pdf
- https://archive.org/stream/talkingmachinew17bill/talkingmachinew17bill_djvu.txt
カーディナル
カーディナル・フォノグラフ社(Cardinal Phonograph Co.)の外国語レコード部門は、5月の release 全体をユダヤ系レパートリーに充てたと報じられました。需要の強さもあわせて記されており、1921年5月の時点で同社が民族系録音を戦略的に前面化していたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1921-05.pdf
- https://archive.org/stream/talkingmachinew17bill/talkingmachinew17bill_djvu.txt
