1922年3月に録音された音楽
1922年3月は、政治・社会不安と新しい大衆文化の広がりが同時に見えた月でした。南アフリカ連邦ではウィットウォータースランドの鉱山争議が武装反乱化し、三月十八日までに鎮圧されました。英領インドではモハンダス・カラムチャンド・ガンディー(Mohandas Karamchand Gandhi, 1869–1948)が三月十日に逮捕され、三月十八日に禁錮六年を言い渡されました。外交面では、アメリカ合衆国上院が三月末にワシントン会議で署名された諸条約の批准を進め、戦後の太平洋秩序再編が具体化しました。軍事技術では、アメリカ海軍のラングレー(USS Langley, CV-1)が三月二十日に再就役し、同国初の航空母艦となりました。文化面では、ドイツ映画『ノスフェラトゥ』(Nosferatu)が三月四日にベルリンで初公開されました。通信分野でも放送網の拡大が著しく、アメリカ合衆国では三月十日時点で六十七局、三月二十三日時点で九十八局の放送局が確認され、ラジオが急速に日常へ入り込み始めていました。
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1922年3月の録音に関する情報のまとめ
1922年3月の録音業界では、レコード会社と蓄音機会社が、価格競争だけでなく、販売会議、新機種投入、地方販路拡張、新聞広告、店頭展示を組み合わせて需要を掘り起こしていたことが確認できます。同月はラジオ放送局数の急増が記録されており、音楽の受容環境が変わり始める一方で、業界側は販売店支援と地域別営業をむしろ強めていました。三月の一次資料で当月活動を直接確認できる範囲では、エオリアン社のヴォカリオン、ジェネラル・フォノグラフ社のオーケー・レコード、ソノラ・フォノグラフ社、スター社のジェネット・レコード、コロムビア・グラフォフォン社、トーマス・A・エジソン社系販売網、ビクター・トーキング・マシン社系販売網、ブラック・スワン・レコードの動きが追えます。
ヴォカリオン
エオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)は、1922年3月11日号の業界誌で、新しいコンソール型三機種を加えたことが報じられています。追加されたのはアーリー・アメリカン、クイーン・アン、ジャコビアンの各様式機で、さらに三月六日発効で既存のピリオド様式機の価格引下げも告知されており、同月の同社が新機種投入と価格調整を同時に進めていたことが分かります。
オーケー
ジェネラル・フォノグラフ社(General Phonograph Corp.)のオーケー・レコード(Okeh Records)は、ウィスコンシン州とアッパー・ミシガン地域の取扱店を集めた販売会議で、レコードの実演と録音工程の説明を行っていました。さらに三月二十五日号では、同社が人気ヴォードヴィル歌手との専属契約を発表しており、三月の時点で販売店向け教育と専属アーティスト強化の両面を進めていたことが確認できます。
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1922-74-10/44
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1922-74-12/56
ソノラ
ソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Co.)は、ヤール&ランゲ社(Yahr & Lange Drug Co.)を通じて、ウィスコンシン州とアッパー・ミシガン地域の販売店会議を開き、各機種の研究と討議を行っていました。三月二十五日号では、アダム様式機を題材にした小型スクリーンを広告部門が用意し、販売店のウィンドー展示に活用していたことも報じられており、同月の同社が卸売会議と店頭販促を並行していたことが分かります。
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1922-74-10/44
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1922-74-12/56
ジェネット
スター社(Starr Piano Co.)のジェネット・レコード(Gennett Records)は、アイオワ州デモインのダニング社(The Duning Co.)を通じて販路拡張を進めていました。1922年3月6日付記事では、同社の担当地域がアイオワ州とネブラスカ州の大部分へ広がり、ウェブスター・シティとエイムズに新規取扱店が加わったことが報じられており、地方流通網の拡充が三月の企業活動として確認できます。
コロムビア
コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)は、1922年3月11日号で、ヨーロッパ各地で録音した新しい外国語レコード群を近く発表すると告知していました。三月二十五日号では、デトロイト支店で過去一か月のレコード売上が増加し、新聞広告の後押しでグラフォノーラの販売も伸びたことが報じられており、同月の同社が国際録音の拡充と地方販売の活性化を同時に進めていたことが分かります。
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1922-74-10/44
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1922-74-12/56
エジソン
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)製品の販売網では、シカゴのフォノグラフ社(The Phonograph Co.)に関する動きが確認できます。1922年3月6日付記事では、同社の卸売エジソン事業を新拠点へ移し、サウス・ワバッシュ街の小売部門を閉じる方針が報じられており、販売体制の再編が進んでいたことがうかがえます。ただし、同記事自体が報道形式で、細部は同社総支配人から確認できていないため、再編の全容までは断定できません。
ビクター
ビクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)系の販売活動としては、ワシントンのヴァン・ウィックル社(Van Wickle Piano Co.)の動きが三月十八日付で報じられています。同社は首都に集まる外交関係者や旅行者を見込み、ポータブル型のビクトローラとビクター盤の輸出販売を前面に出しており、1922年3月の時点でビクター製品が国際持出し需要にも対応する商品として訴求されていたことが分かります。
ブラック・スワン
ブラック・スワン・レコード(Black Swan Records)は、1922年3月号の『The Crisis』に「A List of Sacred and High Class Black Swan Records」と題する広告を掲載していました。この広告からは、同月の同レーベルが宗教曲や高級レパートリーを前面に出し、蓄音機所有者へ向けて継続的にカタログ販売を訴求していたことが確認できます。
- https://www.marxists.org/history/usa/workers/civil-rights/crisis/0300-crisis-v23n05-w137.pdf
- https://archive.oah.org/special-issues/teaching/2004_03/sources.html
