1910年11月に録音された音楽
1910年11月は、既存秩序の揺らぎと新技術の前進が同時に可視化した月でした。8日のアメリカ合衆国中間選挙では民主党(Democratic Party)がアメリカ合衆国下院(United States House of Representatives)で十五年ぶりに多数派を回復し、10日にはイギリス政府がポルトガル共和国(Portuguese Republic)を事実上承認しました。14日にはユージーン・イーリー(Eugene Ely, 1886–1911)がアメリカ海軍艦からの離陸に成功し、海軍航空の出発点となりました。20日にはフランシスコ・I・マデロ(Francisco I. Madero, 1873–1913)の蜂起呼びかけがメキシコ革命(Mexican Revolution)の本格化を促し、同日にはレフ・トルストイ(Leo Tolstoy, 1828–1910)が死去しました。さらに22日にはリオデジャネイロでチバタの反乱(Revolta da Chibata)が起こり、近代国家の軍隊と社会秩序が抱える矛盾も露出しました。
この月の確認されている録音:0曲
1910年11月の録音に関する情報のまとめ
1910年11月の録音関連では、ナショナル・フォノグラフ社(National Phonograph Company)が年末商戦を強く意識しつつ、国内向け大衆盤、外国盤、グランド・オペラ盤を並行して押し出していたことが確認できます。10月号掲載の11月売り新譜には流行歌、コミック・ソング、四重唱、行進曲が入り、同時に外国盤の月次リストも続いていました。さらに秋の誌面ではオペラ歌手の追加投入とアンバーオーラの大規模販促が進められ、1910年11月は録音物そのものだけでなく、再生機、付属アタッチメント、店頭広告まで含めた総合的な販売局面にあったことが誌面から確認できます。
11月売り国内盤は娯楽性の幅が広い
10月号のアドバンス・リストに示された11月売り国内盤では、「Curly Head」「Good-Bye Betty Brown」「That’s Good」「Sweetness」「Blaze of Glory March」などが確認できます。少なくともこの並びだけでも、流行歌、コミック・ソング、男性四重唱、行進曲が同じ月の新譜として併売されており、家庭用カタログが一つの趣味層に偏っていなかったことが分かります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://archive.org/download/edisonphonograph08moor/edisonphonograph08moor.pdf
外国盤の月次供給も続いていた
同じ10月号には「Foreign Amberol and Standard Records」の11月売り一覧も掲載され、少なくとも冒頭にイタリアン・アンバーオル盤の月次リストが置かれていました。1910年後半のエジソン系カタログでは、国内盤の新譜案内と並行して外国語盤・外国曲の補充が継続していたことが確認でき、11月もその流れの中に位置づけられます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://archive.org/details/edisonphonograph08moor
オペラ録音では11月サプリメント級の強化が見える
1910年秋の『Edison Phonograph Monthly』では、11月サプリメントに向けたオペラ歌手の拡充が告知されていました。誌面で確認できる範囲では、マダム・キャロライナ・ロンゴーネ=ホワイト(Carolina Longone-White, 生没年未確認)、セルマ・クルツ(Selma Kurz, 1874–1933)、アリストデモ・ジョルジーニ(Aristodemo Giorgini, 生没年未確認)らが紹介され、レオ・シュレザーク(Leo Slezak, 1873–1946)の訴求も続いていました。さらに専門ディスコグラフィでは、1910年11月リスト分として、マリア・ガルバニー(Maria Galvany, 生没年未確認)による『魔笛』夜の女王のアリアと、サラ・ベルナール(Sarah Bernhardt, 1844–1923)による『La Samaritaine』朗読が確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://adp-assets.library.ucsb.edu/edison_4m-cyls.pdf
- https://archive.org/download/edisonphonograph08moor/edisonphonograph08moor.pdf
年末商戦では機械販売とレコード販売が一体で動いていた
11月号ではアンバーオーラ販売の年末攻勢が前面に出ており、ダブルページ広告、新聞広告、ウィンドー装飾、コンビネーション・アタッチメントの案内が一体で推進されていました。誌面には、トピカのサンタフェ・ウォッチ社(Santa Fe Watch Company)の電飾看板が八日間で多数の問い合わせを生み、機械販売は従来より五〇パーセント多く、レコード販売は実数で一〇〇パーセント増になったとの報告が掲載されています。また11月26日付のフレズノの販売店からの書簡では、一日一〜二台を売り、クリスマスまでに約五十台を見込むと記されており、年末商戦の熱気が具体的な数字で残っています。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://archive.org/details/edisonphonograph08moor
