1893年12月に録音された音楽

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1893年12月に録音された音楽

1893年12月は、世界各地で帝国主義的な軍事衝突と、都市文化を象徴する大型公演が同じ暦の上に並んだ月でした。アフリカ南部では第一次マタベレ戦争のさなか、ブリティッシュ・サウス・アフリカ・カンパニー(British South Africa Company)の部隊がシャンガニ川付近で全滅した「シャンガニ・パトロール」(1893年12月3日–4日)が起きています。一方、アメリカ合衆国ニューヨークではアントニーン・ドヴォルザーク(Antonín Dvořák, 1841–1904)の交響曲第9番がカーネギー・ホール(Carnegie Hall)で1893年12月16日に初演され、同月23日にはドイツのヴァイマル宮廷劇場(Großherzogliches Hoftheater, Weimar)でエンゲルベルト・フンパーディンク(Engelbert Humperdinck, 1854–1921)の歌劇『ヘンゼルとグレーテル』がリヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss, 1864–1949)の指揮で初演されました。

この月の確認されている録音:0曲

1893年12月の録音に関する情報のまとめ

1893年12月の「録音」は、後年の商業レコードのように日付と版が整然と残る局面ばかりではなく、私的録音や販促資料の形で断片的に確認されます。とくに著名人の声を残そうとする試みと、フォノグラフ事業の流通・販売を支えるカタログ類が、同月の動きを具体化します。

セレブリティ録音

1893年12月、ジャンニ・ベッティーニ(Gianni Bettini, 1860–1938)のスタジオで、マーク・トウェイン(Mark Twain, 1835–1910)が歌手ネリー・メルバ(Nellie Melba, 1861–1931)の歌唱に言葉を挟む形のシリンダー録音が行われたと伝えられています。資料上、この録音は商業発売には至らず、1890年代に「著名人の声」そのものを収集対象にする発想が、すでに私的録音の現場で具体化していたことを示します。

カタログと販促資料

1893年12月1日付で、ノース・アメリカン・フォノグラフ・カンパニー(North American Phonograph Company)の刊行物(カタログ、価格表、販促資料に属する資料)が「トマス・エジソン・ペーパーズ・デジタル・エディション(The Thomas A. Edison Papers Digital Edition)」上で確認できます。本文内容そのものは本資料群の個別閲覧を要しますが、少なくとも1893年末時点で、フォノグラフ関連商品の流通・販売を支える印刷物が更新されていた事実は、録音ビジネスが「録る」だけでなく「配る」仕組みと一体で動いていたことを裏づけます。

公演文化と録音文化の接点

1893年12月は、音楽史上の大規模初演が続いた月でもあります。アントニーン・ドヴォルザーク(Antonín Dvořák, 1841–1904)の交響曲第9番は1893年12月16日にカーネギー・ホール(Carnegie Hall)で初演され、同月23日にはエンゲルベルト・フンパーディンク(Engelbert Humperdinck, 1854–1921)の歌劇『ヘンゼルとグレーテル』がヴァイマル宮廷劇場(Großherzogliches Hoftheater, Weimar)で初演されています。これらが同時点で「録音として残ったか」は資料上ここでは確定できませんが、1890年代の録音がしばしば都市の公演文化(劇場・オペラ・交響曲の流行)と並走して発展していく前提条件を、同月の出来事が示しています。