1911年4月に録音された音楽

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1911年4月に録音された音楽

1911年4月の世界は、労働問題、革命、帝国統治の動揺、大衆娯楽の拡大が同時に進んだ月でした。アメリカ合衆国では3月末のトライアングル・シャツウエスト工場火災を受け、4月5日に大規模な追悼行進が行われ、労働安全を求める世論がいっそう強まりました。メキシコでは4月7日にシウダ・フアレスの戦いが始まり、革命は長期独裁体制を揺るがす決定的段階へ入りました。清朝では4月10日に欽定内閣が発足しましたが、統治の立て直しにはつながらず、年後半の辛亥革命へ向かう危機の深まりを示しました。北アフリカではフェズをめぐるフランスの軍事介入が春を通じて国際緊張を高め、同時に欧米都市ではオペラや巡業の人気が続き、蓄音機業界もその熱気を新譜販売へ結び付けていました。

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1911年4月の録音に関する情報のまとめ

1911年4月の録音界では、春の実売新譜と初夏向け予告が並行して動いていました。『The Talking Machine World』の1911年4月向けレコード・バレットでは、エジソン系の新譜がアンベロールとスタンダードの両系統でまとまって告知され、流行歌、行進曲、舞曲、寸劇、オペラ抜粋までを含む幅広い編成が確認できます。さらに、1911年4月号の『Edison Phonograph Monthly』からは、初夏の家庭娯楽や舞踏需要を見越した準備、外国語補遺の掲載調整、交換制度の運用見直しが進んでいたことも読み取れます。つまりこの月は、単なる月次発売にとどまらず、春商戦から夏季販売へ切り替わる節目でした。

1911年4月発売のエジソン・アンベロール新譜

1911年4月向けバレットでは、アンベロール新譜として『ミニョン』(Mignon)セレクション、『ジョセフィン、ぼくのフライング・マシーンに乗っておくれ』(Come, Josephine, in My Flying Machine)、『パンプキン・センターのリヴァイヴァル集会』(The Revival Meeting at Pumpkin Center)、『タンホイザー』(Tannhäuser)の「巡礼の合唱」などが確認できます。演奏主体も、ナショナル(ロンドン)軍楽隊(National [London] Military Band)、エジソン混声四重唱団(Edison Mixed Quartet)、アメリカン・スタンダード管弦楽団(American Standard Orchestra)、エジソン演奏会バンド(Edison Concert Band)など多岐にわたり、家庭向け円筒市場が一つの様式に収斂していなかったことがわかります。

1911年4月発売のエジソン・スタンダード新譜

スタンダード新譜では、『オールド・ベルリン行進曲』(Old Berlin March)、『スウィート・レッド・ローゼズ』(Sweet Red Roses)、『ウェイ・ダウン・イースト』(’Way Down East)、『チキン・リール』(Chicken Reel)が並んでいます。行進曲、叙情歌、地方色の強い歌曲、舞踏向け器楽を同時に出している点から、アンベロールが長時間再生を売りにしていた時期でも、スタンダード規格が依然として日常的な人気レパートリーの重要な受け皿であり続けていたことが確認できます。

1911年4月号で予告された初夏向け新譜

1911年4月号の『Edison Phonograph Monthly』で予告された6月向け新譜には、『ヴァージニア・リール(踊り用)』(Virginia Reel (For Dancing))、『羊飼いの踊り』(Shepherds’ Dance)、『森の鳥たち』(Birds of the Forest-Gavotte)などが見えます。これらは初夏の家庭娯楽や舞踏需要を強く意識した並びであり、春の発売実績を積み上げながら、次の季節に向けてダンス向け録音を前面に出していく編成へ移っていたことがわかります。

1911年4月号で見える補遺と販売制度の調整

1911年4月号では、ドイツ語補遺が通常順からずれて4月の外国語レコード欄に回されたことが示されており、月次補遺の編成が固定的ではなかったことがわかります。また、レコード交換制度についても、1911年4月1日からの運用を前提に、第1四半期の購入実績を基準とする案内が見えており、当時の録音市場が単に新譜を出すだけでなく、補遺配布と在庫回転を細かく管理していたことが確認できます。