1919年8月に録音された音楽
1919年8月は、第一次世界大戦後の再編が各地で具体化した月でした。8月1日にハンガリー・ソビエト共和国(Hungarian Soviet Republic)が崩壊し、4日にはルーマニア王国(Kingdom of Romania)軍がブダペストへ進駐しました。8日にはラーワルピンディ条約(Treaty of Rawalpindi)が結ばれ、アフガニスタン首長国(Emirate of Afghanistan)の対外的独立が確認されます。ドイツでは8月11日付のドイツ国憲法(Constitution of the German Reich of August 11, 1919)が成立し、14日に公布されました。アメリカ合衆国では8月2日にモンタナ州とネブラスカ州がアメリカ合衆国憲法第19修正条項(Nineteenth Amendment to the United States Constitution)の批准を進め、同時に7月末から続いたシカゴ人種暴動(Chicago Race Riot of 1919)は3日に終息しました。文化面では4日にオーギュスト・ロダン(Auguste Rodin, 1840–1917)の作品を中心とするロダン美術館(Musée Rodin)が開館し、25日にはエア・トランスポート・アンド・トラベル社(Air Transport and Travel Ltd.)がロンドンとパリを結ぶ定期国際旅客航空便を開始しました。
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1919年8月の録音に関する情報のまとめ
1919年8月の録音関連市場では、業界誌『トーキング・マシン・ワールド』(The Talking Machine World)1919年8月15日号と各地の新聞広告から、レコードと蓄音機の同時販売、月賦販売の訴求、秋季商戦を見据えた新譜・新機種の案内が継続していたことが確認できます。8月の紙面で直接活動を追えるのは、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)、コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)、パテ・フレール・フォノグラフ社(Pathé Frères Phonograph Company)、エオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)、エマーソン・レコード(Emerson Records)です。いずれも8月の広告面で販売活動を確認でき、地域販売店を通じた普及が進んでいました。
ヴィクター
1919年8月のヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)は、ヴィクター・レコード(Victor Records)とヴィクターの蓄音機を一体で売る方針を強く打ち出していました。8月1日、21日、29日の広告では、機械とレコードを同時に使うことで最良の再生を得るという訴求が繰り返されており、同社が夏季末の家庭需要に向けて全国的な販促を維持していたことが分かります。8月の紙面では、単なる機械販売ではなく、記録媒体を含む総合商品としての販売戦略が前面に出ていました。
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=RPD19190801.1.3
- https://cdnc.ucr.edu/?a=d&d=LAH19190821.2.55.1
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=SBNT19190829.1.3
コロムビア
1919年8月のコロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)は、グラフォノーラ本体とコロムビア・レコード(Columbia Records)を結び付ける販売を継続していました。8月の複数の地域広告では、家庭での使用に適したグラフォノーラの機種選択と、ダンス曲や声楽曲を含む豊富なレコード選択肢が並行して宣伝されています。8月時点のコロムビアは、音楽再生機械そのものよりも、豊富な曲目を楽しめる家庭用音楽装置としての性格を強く押し出していました。
- https://gahistoricnewspapers.galileo.usg.edu/lccn/sn88084163/1919-08-16/ed-1/seq-4/
- https://www.virginiachronicle.com/?a=d&d=RCN19190821.1.1
- https://cdnc.ucr.edu/?a=d&d=FRB19190821.1.3
エジソン
1919年8月のトーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)は、ダイアモンド・ディスク(Diamond Disc)を中核に据えた上級機販売と実演訴求を続けていました。8月12日と14日の広告では、エジソンのダイアモンド・ディスク機の具体的な機種案内が確認でき、月末の広告では新しいエジソン・リ=クリエーションズ(Edison Re-Creations)の販売告知も見えます。8月のエジソンは、録音物そのものだけでなく、専用機構を備えた高級再生機との組み合わせで市場を維持していました。
- https://eresources.nlb.gov.sg/newspapers/digitised/issue/straitstimes19190812-1
- https://eresources.nlb.gov.sg/newspapers/digitised/issue/straitstimes19190814-1
- https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/06/Victoria_Daily_Times_%281919-08-30%29_%28IA_victoriadailytimes19190830%29.pdf
パテ
1919年8月のパテ・フレール・フォノグラフ社(Pathé Frères Phonograph Company)は、パテ・レコード(Pathé Records)とパテフォン(Pathéphone)の双方を売り込んでいました。8月2日の広告では、パテ盤が他社製蓄音機でも再生できることが訴求されており、16日と28日の広告でも機械とレコードを組み合わせた販売が続いています。この月のパテは、専用機だけでなく互換的な利用のしやすさも前面に出し、導入障壁を下げながら販売網を広げていました。
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190802-01.1.3
- https://cambridge.dlconsulting.com/?a=d&d=Chronicle19190816-01.2.8.1
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190828-01.1.17
ヴォカリオン
1919年8月のエオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)は、音質面の優位を訴える広告が目立ちます。8月10日と24日の広告では、音の深さや再現の忠実さを前面に出した文言が確認でき、8月21日と22日頃の広告でも説明書請求や試聴を促す販売活動が続いていました。8月のヴォカリオンは、曲目よりもまず機械の音響性能を印象づける売り方を強めていたといえます。
- https://www.nyshistoricnewspapers.org/?a=d&d=suna19190810-01.1.3
- https://www.virginiachronicle.com/?a=d&d=BBU19190821.1.7
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=RPD19190822.1.4
エマーソン
1919年8月のエマーソン・レコード(Emerson Records)は、販売店広告の中で具体的な商品として動いていました。8月1日と15日の広告では、ヴィタノーラ型機との組み合わせで「six newest Emerson records」とされるセット販売が行われており、エマーソン盤が家庭向けの即売商品として流通していたことが分かります。同月の業界誌でもエマーソン関係の掲載が見えるため、8月の市場で同レーベルが継続的に扱われていたことは確かです。
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190801-01.1.15
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19190815-01.1.17
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1919-08.pdf
