1919年11月に録音された音楽

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1919年11月に録音された音楽

1919年11月は、第一次世界大戦後の秩序再編が各分野で進んだ月でした。イギリスでは11月1日に政府暗号学校(Government Code and Cypher School)が発足し、戦時の暗号解読体制が平時の国家機関へ移されました。11月6日には王立協会(Royal Society)と王立天文学会(Royal Astronomical Society)の合同会合で、5月の日食観測結果がアルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein, 1879–1955)の一般相対性理論を支持すると公表されました。オランダではハンソ・イッゼルダ(Hanso Idzerda, 1885–1944)が11月6日に定時の公開ラジオ放送を始めました。アメリカ合衆国では11月11日に最初の休戦記念日が営まれ、19日にはアメリカ合衆国上院(United States Senate)がヴェルサイユ条約(Treaty of Versailles)を否決しました。さらにワシントンD.C.では国際労働会議(International Labour Conference)第1回会期が同月を通じて開かれ、27日には対ブルガリア講和条約がヌイイ=シュル=セーヌで調印されました。

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1919年11月の録音に関する情報のまとめ

1919年11月の一次資料上では、録音産業は新譜発売だけでなく、店頭実演、万能再生機構の訴求、家庭向け販促、実演会の開催などを組み合わせながら年末商戦に入っていました。当月の資料で活動を直接確認できる企業としては、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)、コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)、ブランズウィック=バルク=コーレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Co.)、パテ・フレール・フォノグラフ社(Pathé Frères Phonograph Company)、エオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)、ソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Co.)、エマーソン・フォノグラフ社(Emerson Phonograph Co.)が挙げられます。少なくとも当月の公開広告と販売資料では、各社とも再生性能と販売方法を強く打ち出していました。

ヴィクター

ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)については、1919年11月1日付と10月31日付の広告で、新しいヴィクター盤を月初に店頭で実演する販売慣行が確認できます。販売店は新譜解説の冊子を配布し、希望する曲をその場で再生すると告知しており、11月の販促が新譜実演を軸に進められていたことがわかります。

コロムビア

コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)については、1919年11月18日付と28日付の広告から、コロムビア・グラフォノーラの販売と新譜供給が年末需要に向けて進められていたことが確認できます。11月下旬の広告では、コロムビアの専属アーティストであるサッシャ・ヤコブセン(Sascha Jacobsen, 1895–1972)の名を前面に出した宣伝も見られ、機械販売とレコード販促が連動していました。

ブランズウィック

ブランズウィック=バルク=コーレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Co.)は、1919年11月の広告で「ウルトナ」と「トーン・アンプリファイア」を繰り返し訴求していました。11月1日、8日、22日付の広告では、他社盤再生を可能にする再生機構と木製の音響構造が一体の特長として説明されており、同社が当月に再生互換性を販売上の主軸に置いていたことが確認できます。

パテ

パテ・フレール・フォノグラフ社(Pathé Frères Phonograph Company)については、1919年11月6日付広告で、インディアナ州内の98店の販売網を前面に出し、新しいパテ盤を各店で聴けると告知していました。少なくとも当月の公開販促では、広い販売店網を活用した試聴訴求が行われていました。

ヴォカリオン

エオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)は、1919年11月の広告で万能再生機構を大きく打ち出していました。11月7日付広告では新しいトーンアームが「すべての標準盤」を再生できるとされ、11月21日付広告ではコロムビア製品と並ぶ主要商品として扱われています。11月末の広告でも新しいユニバーサル機構の優位が訴えられており、当月の販売戦略が明確です。

エジソン

トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)については、1919年11月の広告で新エジソン機の性能訴求が続いていました。11月7日付広告では新エジソン蓄音機が他機種とは別格であると宣伝され、11月24日付の紙面ではフリーダ・ヘンペル(Frieda Hempel, 1885–1955)を用いた「実演と再生音の比較」型の販促が見られます。当月のエジソンは、音質の優位を前面に出した販売を継続していました。

ソノラ

ソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Co.)については、1919年11月3日、5日、7日、11日付の広告から、家庭用娯楽機器としての位置づけと、他社盤再生への対応が確認できます。11月11日付広告では追加装置なしであらゆるディスク盤を再生できる点が強調され、11月上旬の一連の広告では家族向けの家庭娯楽として販売されていました。

エマーソン

エマーソン・フォノグラフ社(Emerson Phonograph Co.)は、1919年11月下旬にエマーソン・インターナショナル社(Emerson International, Inc.)と連名で「Monday Music Matinee」を告知していました。11月22日、24日、26日付の紙面では、人気音楽家の実演出演が前面に出されており、当月の販促が新聞広告だけでなく実演会と結びついていたことが確認できます。