1923年2月に録音された音楽
1923年2月は、政治秩序の再編、植民地支配への抵抗、考古学上の発見、工業技術の商品化が同時に進んだ月でした。2月1日、ベニート・ムッソリーニ(Benito Mussolini, 1883–1945)政権下で黒シャツ隊は国家治安義勇民兵隊へ改組されました。2月7日にはワシントンで中央アメリカ平和友好一般条約(General Treaty of Peace and Amity)が調印され、中米諸国の政変と承認問題に新たな枠組みが設けられました。16日にはハワード・カーター(Howard Carter, 1874–1939)らがツタンカーメン王墓の玄室を開き、古代エジプト研究への関心が世界的に高まりました。中国では孫文(Sun Yat-sen, 1866–1925)が広州で新政権の大元帥に就き、北アフリカではアブド・エル=クリム(Abd el-Krim, 1882–1963)が率いる勢力がリーフ共和国(Republic of the Rif)を成立させました。欧州ではルール占領への消極抵抗が続き、ドイツ経済と通貨不安はいっそう深まりました。米国では同月に有鉛ガソリンの市販が始まり、自動車社会の拡大を象徴する動きとなりました。
この月の確認されている録音:0曲
1923年2月の録音に関する情報のまとめ
1923年2月の録音業界では、大手各社が録音、製造、販売の各面で活動を続けていました。ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)では通常の英語圏向け新譜に加えてフィリピン向け録音が見え、コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)ではベッシー・スミス(Bessie Smith, 1894–1937)の初回録音が行われました。ブランズウィック=バルク=コレンダー社(The Brunswick-Balke-Collender Company)とトーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)も流行歌、ダンス音楽、声楽の各分野で新録音を続けていました。さらに、ジェネット・レコード(Gennett Records)とエオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)でも、2月付の発売資料から新譜供給を確認できます。少なくとも当月の資料上では、1923年2月は主要各社が販売用レパートリーの補充を継続していた月でした。
ヴィクター
1923年2月9日の録音資料では、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)が《Himno nacional filipino》と《Hail Philippines》を録音していました。1923年2月の同社は、通常の国内向け供給だけでなく、フィリピン市場を意識した録音活動も続けていたことが確認できます。また同月の業界紙では、同社が既存工場に約100万ドル規模の増築を進めていることも報じられており、録音活動と製造能力拡張が並行していた月でした。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1923-02-09
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1923-02.pdf
コロムビア
1923年2月15日、コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)は、ベッシー・スミス(Bessie Smith, 1894–1937)とクラレンス・ウィリアムズ(Clarence Williams, 1893–1965)による《Down hearted blues》などを録音しました。これはベッシー・スミス(Bessie Smith, 1894–1937)の初回録音として知られ、同社が1923年2月に新しい有力歌手を録音陣に加えたことを示す重要な動きです。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1923-02-15
- https://www.loc.gov/static/programs/national-recording-preservation-board/documents/Down-HeartedBlues.pdf
ブランズウィック
1923年2月15日の録音資料では、ブランズウィック=バルク=コレンダー社(The Brunswick-Balke-Collender Company)が《Absent》と《Una furtiva lagrima》を録音していました。1923年2月の同社は、流行歌系とオペラ系の双方で録音を進めており、一般向け市場と高級音楽市場の両方を意識した供給を続けていたことが確認できます。
エジソン
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、1923年2月15日にブロードウェイ・ダンス・オーケストラ(Broadway Dance Orchestra)による《Mister Gallagher and Mister Shean》が録音され、2月19日にはクラウディア・ムツィオ(Claudia Muzio, 1889–1936)による《Spiagge amate》が録音されました。1923年2月の同社は、ダンス音楽と本格声楽の両分野で新録音を行っていたことが確認できます。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1923-02-15
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1923-02-19
ジェネット
ジェネット・レコード(Gennett Records)では、1923年2月12日付の発売資料として、コール・オブ・ザ・ノース・オーケストラ(Call Of The North Orchestra)による《Secrets》が確認できます。この盤は《Peggy Dear》とのカップリングで、同月のジェネット・レコード(Gennett Records)がダンス音楽系レパートリーを市場に送り出していたことを示しています。
ヴォカリオン
エオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)では、1923年2月付の発売資料として、アーロン・レベデフ(Aaron Lebedeff, 1873–1960)とエイブ・シュワルツ楽団による《A Malke of Peisach》および《Peisach Zeit》が確認できます。1923年2月の同ブランドは、イディッシュ語による歌唱レパートリーを含む新譜供給を続けていました。
- https://archive.org/details/78_a-malke-of-peisach_aaron-lebedeff-abe-schwartz-orchestra-gilrod_gbia0379090a
- https://archive.org/details/78_peisach-zeit_aaron-lebedeff-abe-schwartz-orchestra-doctor_gbia0379090b
