Mary Had a Little Lamb(メリーさんのひつじ)
「Mary Had a Little Lamb(メアリーは小さな子羊を飼っていた)」は、英語圏で広く親しまれている童謡の一つです。この詩は、19世紀のアメリカで作られ、子供向けの教育的な歌として長年にわたり歌い継がれてきました。
詞について
この詩は、Sarah Josepha Hale(サラ・ジョセファ・ヘイル)というアメリカの作家によって書かれました。1830年5月24日にボストンの雑誌『Juvenile Miscellany(ジュヴェナイル・ミセラニー)』で初めて出版されました。
ヘイルは、教育や文学の発展に貢献した著名な作家であり、アメリカの感謝祭を国民の祝日とするように働きかけた人物としても知られています。彼女はこの詩を、実際に起こった出来事に基づいて書いたとされています。
この詩のモデルになったとされるのは、Mary Elizabeth Sawyer(メアリー・エリザベス・ソーヤー)という少女の実話です。彼女は1806年にマサチューセッツ州スターリングで生まれました。
ある日、メアリーは弱っていた子羊を見つけ、母親の反対を押し切って世話をしました。その子羊は次第に元気になり、彼女にとても懐くようになりました。そして、ある日、メアリーが子羊を学校に連れて行くと、クラスメートたちは驚き、先生もユーモアを交えながら注意しました。この出来事が後に詩の内容に反映されたと言われています。
この実話を証明するために、スターリングの町にはメアリーが生まれた家の記念碑があり、「Mary Had a Little Lamb」の伝説が語り継がれています。
メロディについて
この詩にメロディを付けたのはLowell Mason(ロウェル・メイソン) です。
ロウェル・メイソン(1792年 – 1872年)は、アメリカの作曲家・音楽教育者であり、賛美歌(Hymn)の作曲でも知られています。彼は音楽教育の発展に貢献し、特に子供向けの音楽教育に力を入れていました。
メイソンは「Mary Had a Little Lamb」にメロディを付け、これを子供向けの楽曲として定着させました。彼の作ったメロディは、現在でも英語圏の子供たちに親しまれています。
この曲は、初心者向けの音楽教育においてもよく使用され、特にピアノやバイオリンを始める際の練習曲として定番になっています。
曲が与えた影響
この詩は、トーマス・エジソン(Thomas Edison)が発明した蓄音機(フォノグラフ)に録音された最初の詩としても有名です。1877年、エジソンは自らの発明をテストするために、「Mary Had a Little Lamb」の最初の一節を録音しました。これは、人類が機械によって音声を録音・再生した最初の例の一つであり、歴史的な出来事となりました。
「Mary Had a Little Lamb」は、現在でも英語圏の幼稚園や保育園で歌われており、多くの絵本やアニメーションの題材としても使われています。また、音楽教育において、初心者が最初に学ぶ曲としても定番となっています。
また、ポップカルチャーにおいても、この詩はさまざまな形で引用されてきました。例えば、ビートルズのポール・マッカートニーは1972年に「Mary Had a Little Lamb」という曲を発表し、世界的に注目を集めました。
