1909年8月に録音された音楽

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1909年8月に録音された音楽

1909年8月は、政治・技術・社会の各分野で近代化の進行がはっきり見える月でした。8月2日にはアメリカ合衆国造幣局(United States Mint)が、エイブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln, 1809–1865)の肖像を採用した新1セント硬貨を発行し、同日にはアメリカ陸軍通信隊(United States Army Signal Corps)が、オーヴィル・ライト(Orville Wright, 1871–1948)とウィルバー・ライト(Wilbur Wright, 1867–1912)の飛行機を正式受領して同国初の軍用機としました。 5日にはウィリアム・ハワード・タフト(William Howard Taft, 1857–1930)政権下でペイン=オルドリッチ関税法が成立し、経済政策をめぐる論争が続きました。7日にはアリス・ハイラー・ラムジー(Alice Huyler Ramsey, 1886–1983)が女性として初めてアメリカ大陸横断自動車走行を完了し、自動車時代の広がりを象徴しました。さらにフランスのランスでは8月に世界初の大規模な国際航空大会が開かれ、グレン・ハモンド・カーティス(Glenn Hammond Curtiss, 1878–1930)がゴードン・ベネット・トロフィーを獲得して、航空競技の国際化を印象づけました。

この月の確認されている録音:0曲

1909年8月の録音に関する情報のまとめ

1909年8月に確認できる録音関連情報は、ナショナル・フォノグラフ社(National Phonograph Company)による専属歌手の獲得、メキシコ録音の拡充、そして秋季発売予定レコードの告知が中心です。いっぽうで、資料上は「発売予告」と「実際の録音日」が必ずしも一致しておらず、月内の録音日まで確認できる例と、発売予定としてのみ確認できる例を分けて扱う必要があります。

スーザ楽団のエジソン録音開始

1909年8月は、ジョン・フィリップ・スーザ(John Philip Sousa, 1854–1932)のスーザ楽団がナショナル・フォノグラフ社(National Phonograph Company)のための録音を実際に開始した時期として重要です。1909年7月号の『エジソン・フォノグラフ・マンスリー』は、同社がスーザと専属契約を結んだものの、楽団の演奏予定のため録音作業は8月まで始められないと説明しています。後年のディスコグラフィでは、アンベロール285「Stars and Stripes Forever」が1909年8月録音の可能性が高いものとして整理されており、さらにアンベロール319「Manhattan Beach March / El Capitan March」およびアンベロール325「Washington Post March / High School Cadets March」も同様に1909年8月録音の可能性が高い記録として扱われています。したがって、1909年8月はスーザ楽団のエジソン録音が予告段階から実制作段階へ移った月として位置づけることができます。ただし、各曲の厳密な録音日までは、現時点で確認できた資料では確定できません。

レオ・スレザークの専属契約

1909年8月号の『エジソン・フォノグラフ・マンスリー』は、レオ・スレザーク(Leo Slezak, 1873–1946)がナショナル・フォノグラフ社(National Phonograph Company)のために円筒レコードを独占的に吹き込む契約を結んだと伝えています。本文では、スレザークがウィーン王立歌劇場の著名テノールであり、次季にはメトロポリタン歌劇場(Metropolitan Opera House)への出演が予定されていたことも紹介されています。

メキシコ録音の拡充

同じ8月号は、メキシコ・シティでの録音事業の拡大も報じています。そこでは過去3年間にわたり録音技師を派遣しており、すでにメキシコ向けのスタンダード盤444点、アンベロール盤41点を発売済みで、さらに数百点のスタンダード盤・アンベロール盤を月次で出す予定とされています。また、この録音旅行は当時までで最も成功したものとされ、制作はアルトゥロ・ロチャ(Arturo Rocha, 生没年不明)が監修したと記されています。

10月発売予定レコードの予告

1909年8月号には、1909年10月発売予定のエジソン・スタンダード盤およびエジソン・アンベロール盤の前売告知が掲載されています。現在確認できる関連ディスコグラフィでは、この時期の10月掲載曲として、ヴィクター・ハーバート(Victor Herbert, 1859–1924)と楽団による「Air on the G string」、ハーバート・L・クラーク(Herbert L. Clarke, 1867–1945)による「The bride of the waves」、リード・ミラー(Reed Miller, 生没年不明)による「In the garden of my heart」などが確認できます。ただし、これらは8月号で発売予告として確認できるのであって、すべての実録音日が1909年8月であるとまでは現時点で確認できません。

1909年8月13日に確認できる録音日付

個別の日付まで確認できる例としては、アンベロール302番「Carnival of Venice」があります。この曲はオリヴォッティ・トルバドゥールズ(Olivotti Troubadours)により1909年8月13日にニューヨークで録音され、1909年9月掲載曲として記録されています。したがって、1909年8月の録音として日付を伴って確実に掲げられるものは、現時点ではこの例が確認できる一方、8月号掲載の他曲については発売予告と録音日を混同しない扱いが必要です。