1909年2月に録音された音楽
1909年2月は、政治・社会・文化・技術の各分野で後年の歴史に長く影響する動きが重なった月でした。2月12日には、後に全米黒人地位向上協会(National Association for the Advancement of Colored People)へつながる呼びかけが公表され、アメリカ合衆国における公民権運動の新たな結節点が形づくられました。2月17日にはジェロニモ(Geronimo, 1829–1909)が死去し、19世紀から続いたアパッチ抵抗の象徴的時代が幕を閉じました。2月20日にはフィリッポ・トンマーゾ・マリネッティ(Filippo Tommaso Marinetti, 1876–1944)の未来派宣言がパリの『フィガロ』紙に掲載され、前衛芸術の一大潮流が公然と始動しました。2月22日にはアメリカ合衆国大西洋艦隊(United States Atlantic Fleet)の世界巡航艦隊が帰還し、海軍力を用いた国際的示威の一つの到達点となりました。2月23日にはシルバー・ダート号(Silver Dart)がカナダで初の動力飛行に成功し、航空史の転機が訪れました。さらに2月28日にはアメリカ合衆国で最初のナショナル・ウーマンズ・デー(National Woman’s Day)が実施され、女性参政権運動と労働運動の結び付きが可視化されました。
この月の確認されている録音:0曲
1909年2月の録音に関する情報のまとめ
1909年2月の録音関連では、エジソン陣営の4分円筒レコードであるアンベロールを軸に、市場の拡張と売り方の再編がはっきり見える時期に入っていました。『エジソン・フォノグラフ・マンスリー』1909年2月号では、アンベロールが各地で熱狂的に受け入れられ、事業に新しい活気を与えたと報告されています。同時に、都市では演奏会形式、地方では店頭再生というかたちで、録音物を実際に聞かせる実演販売が重視されました。さらに同号掲載の1909年4月発売分告知では、モーリス・レヴィ(Maurice Levi, 生没年不明)とマニュエル・ロマン(Manuel Romain, 生没年不明)を前面に出した新譜訴求が行われ、2分盤と4分盤を併用しながら、録音物の長時間化とスター歌手・楽団の訴求を結びつける販売戦略が進んでいたことが確認できます。
アンベロールの反響
1909年2月号は、1月5日にオレンジで開かれた東部セールスマン会議の報告を掲載し、新しいアンベロール・レコードが各地で非常に好意的に受け止められ、事業全体に新しい生命を吹き込んだと述べています。1908年秋に登場した4分円筒が、1909年2月の段階では単なる新製品紹介を越え、販売現場の実感として「事業を動かす中心商品」になりつつあったことを示す記述です。月ページ本文では、1909年2月を、長時間録音の市場浸透が営業報告の言葉として確認できる時点として位置づけられます。
- https://archive.org/details/edisonphonograph07moor
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1909-Vol-7.pdf
- https://archive.org/stream/edisonphonograph07moor/edisonphonograph07moor_djvu.txt
店頭実演の重視
1909年2月号の「Demonstrations」は、都市の販売店では招待状やプログラムを伴う「コンサート」が行われ、地方では店の前扉を開けて再生音を聞かせるだけでも十分に客を引きつけられるとしたうえで、重要なのは娯楽として聞かせるだけでなく、販売意図を伴った実演にすることだと強調しています。誌面では「エジソンの実演とは、娯楽に販売術を加えたもの」という趣旨が明言されており、1909年2月が録音物そのものの制作だけでなく、録音物をどう聞かせて売るかという流通・展示技法の整理期でもあったことが分かります。
- https://archive.org/details/edisonphonograph07moor
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1909-Vol-7.pdf
- https://archive.org/stream/edisonphonograph07moor/edisonphonograph07moor_djvu.txt
1909年4月発売分の告知と特選アーティスト訴求
1909年2月掲載の告知では、1909年4月発売分のエジソン盤が1909年3月25日に店頭準備完了となることが示され、同時にモーリス・レヴィ(Maurice Levi, 生没年不明)とマニュエル・ロマン(Manuel Romain, 生没年不明)が4月向けの注目人材として大きく扱われました。広告文では、レヴィの楽団による「Happy Days March」と、ロマンの2曲、とくに楽曲全体を収めたアンベロール盤が前面に出されており、1909年2月時点で、長時間盤の利点を「曲を全曲収録できること」と結びつけて訴求していたことが確認できます。加えて、アンベロールのディスコグラフィー上の整理でも、1909年2月掲載分は1909年3月25日販売開始・1909年4月カタログ掲載に対応することが明記されており、月ごとの新譜発表・販売開始・カタログ収載の時間差も把握できます。
- https://archive.org/details/edisonphonograph07moor
- https://archive.org/stream/edisonphonograph07moor/edisonphonograph07moor_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1909-Vol-7.pdf
