1917年2月に録音された音楽
1917年2月は、第一次世界大戦の緊張が外交、法制度、社会不安、文化の各面で一段と可視化した月でした。2月3日にはアメリカ合衆国(United States of America)がドイツ帝国(German Empire)との国交を断絶し、2月5日にはベヌスティアーノ・カランサ(Venustiano Carranza, 1859–1920)の下でメキシコ合衆国政治憲法(Political Constitution of the United Mexican States)が公布されました。同じ2月5日にはアメリカ合衆国(United States of America)で1917年移民法(Immigration Act of 1917)が成立し、移民規制がさらに強化されました。2月13日にはマタ・ハリ(Mata Hari, 1876–1917)が逮捕され、2月24日にはツィンメルマン電報(Zimmermann Telegram)がアメリカ合衆国(United States of America)政府に渡されて対独感情を強く刺激しました。さらに2月26日にはオリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンド(Original Dixieland Jazz Band)がヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)で録音を行い、後に初期ジャズ録音史で重要な記録として扱われる録音を残しました。戦時外交、国家統制、世論の動揺、そして大衆文化の新しい動きが同じ月の中で交差していたことが、この月の特徴です。
この月の確認されている録音:0曲
1917年2月の録音に関する情報のまとめ
1917年2月の録音業界では、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)がシリンダーの月次補充と録音制作を続け、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)では二月の販売広告と新規録音の双方が確認できます。コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)でも同月の録音日と月次販売広告が確認でき、主要各社が継続的な供給体制を維持していたことがわかります。その一方で、レミントン・レコード(Remington Records)は在庫処分広告が出ており、廉価盤の一角では縮小の動きも見えます。さらに、ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Co.)のブランズウィック・フォノグラフ(Brunswick Phonograph)と、イオリアン社(The Aeolian Company)のイオリアン・ヴォカリオン(Aeolian Vocalion)については、二月の代理店広告と店頭訴求が確認でき、1917年2月は大手の継続供給、新規録音、販売網拡張、廉価盤整理が同時に見える月でした。
エジソン
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、二月補充のエジソン・ブルー・アンベロール・レコード(Edison Blue Amberol Records)が確認できます。『トーキング・マシン・ワールド』(The Talking Machine World)1917年1月号には、二月補充として3093「The Chicken Walk」と3094「Alice in Wonderland」などが載っており、同社が二月もシリンダー新譜を供給していたことがわかります。さらに2月14日の録音日一覧では、ロバート・E・クラーク(Robert E. Clark, 生没年不明)による “Gethsemane” と “Why I Love Him” の録音が確認でき、当月も制作活動が継続していました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1917-01.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?date=1917-02-14
- https://cylinders.library.ucsb.edu/mainspringcylinders.php
ヴィクター
ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)では、1917年2月8日付広告で新しいヴィクター盤の販売が続いていたことが確認できます。さらに2月26日には、オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンド(Original Dixieland Jazz Band)が “Livery Stable Blues” と “Dixieland Jass Band One-Step” を録音しており、同月のヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)は店頭販売と新規録音の両面で動いていました。二月の活動としては、販売広告の持続と、後年きわめて重要視される録音セッションが同じ月内に並んでいます。
- https://gahistoricnewspapers.galileo.usg.edu/lccn/sn89053972/1917-02-08/ed-1/seq-2/ocr/
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/objects/detail/13106/Victor-18255
- https://blogs.loc.gov/now-see-hear/2017/03/the-first-jazz-recording-one-hundred-years-later/
コロムビア
コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)では、2月5日と2月14日の録音日一覧に同社の複数マトリクスが確認でき、当月も制作が継続していました。加えて、2月9日と2月16日の広告では、コロムビア新譜を毎月20日に発売する販売サイクルが明示されており、コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)が制作と月次補充の両輪で動いていたことがわかります。1917年2月の同社は、録音所と小売市場の双方で継続的に存在感を示していました。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=FirstTakeDate.desc&date=1917-02-05
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?date=1917-02-14
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19170209-01.1.19
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19170216-01.1.19
ブランズウィック
ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Co.)のブランズウィック・フォノグラフ(Brunswick Phonograph)については、1917年2月2日付広告で代理店販売が確認できます。少なくともこの月の段階で、同機種は小売段階で販売網に載り始めており、1917年2月の録音関連企業活動としては、新規参入機種の流通拡大を示す事例として扱えます。録音そのものの確認ではなく、販売網の形成が確認できる点に意味があります。
エオリアン・ヴォカリオン
イオリアン社(The Aeolian Company)のイオリアン・ヴォカリオン(Aeolian Vocalion)については、1917年2月24日付広告で店頭訴求が確認できます。広告では価格帯を示しながら実演を勧めており、同社が二月の段階で実演販売を前面に出していたことがわかります。1917年2月の録音関連企業活動としては、製品そのものの音質訴求と販売促進が中心だったとみられます。
レミントン
レミントン・レコード(Remington Records)については、1917年2月15日付広告で、F・W・ウールワース社(F. W. Woolworth Co.)が「在庫限り」で10セント処分していたことが確認できます。これは通常の新譜拡販ではなく、廉価盤の整理局面を示す動きです。主要各社が継続供給を続けていた同月に、レミントン・レコード(Remington Records)では逆向きの市場局面が見えていました。
