1921年11月に録音された音楽

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1921年11月に録音された音楽

1921年11月は、戦後秩序と国内統治の再編が各地で進んだ月でした。11月1日にはサイエンス・サービス(Science Service)がデラウェア州で法人化され、科学報道の恒常的な配信体制が制度化されます。4日には原敬(1856–1921)が東京駅で暗殺され、日本政界は大きく揺れました。8日にはローマで国民ファシスト党(Partito Nazionale Fascista)が成立し、イタリア政治の右傾化が組織政党の形をとります。11日にはアーリントン国立墓地で無名戦士の墓(Tomb of the Unknown Soldier)の埋葬式が行われ、第一次世界大戦の記憶が国家儀礼として固定化されました。12日にはワシントン軍縮会議(Conference on the Limitation of Armament, Washington, November 12, 1921–February 6, 1922)が開幕し、海軍軍縮と太平洋秩序が主要議題となります。23日にはシェパード=タウナー母性・乳幼児法(The Sheppard–Towner Maternity and Infancy Act)が成立し、25日には裕仁親王(1901–1989)が摂政となって、日本の統治体制にも変化が生じました。

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1921年11月の録音に関する情報のまとめ

1921年11月の一次資料では、録音日そのものよりも、年末商戦へ向けた店頭演出、公開実演、地方博覧会での展示がはっきり確認できます。11月26日号の『Music Trade Review』を見ると、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)はクリスマス向け販促物を整え、コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)は12月ディスプレーと地方店頭販売を進め、ポートランドでは販売店がニュー・エジソン(New Edison)やチェイニー(Cheney)を博覧会と音楽週間の文脈で訴求していました。11月の業界の動きは、録音現場よりも販売現場と宣伝実務に強く現れています。

ヴィクター

ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)は、1921年11月26日号の『Music Trade Review』で、クリスマス販売促進用として各機種を図示したリトグラフ冊子と、贈答用レコード一覧をディーラー配布用に送っていると報じられています。ポートランド音楽週間(Portland’s Music Week)の準備記事でも、シャーマン=クレイ社(Sherman, Clay & Co.)の演奏会でヴィクトローラ(Victrola)が用いられ、ピッツバーグのジョセフ・ホーン社(Joseph Horne Co.)の「Week of Music」でもヴィクター機が実演対象に含まれていました。

コロムビア

コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)は、11月26日号で12月用店頭ディスプレーを用意し、グラフォノラ(Grafonola)とレコードをクリスマス贈答品として見せる販促を進めていました。同じ号では、テネシー州チャタヌーガのウォルトン社(Walton & Co.)が1週間で79台のグラフォノラを販売したと報じられています。さらにポートランドではレミック・ソング・アンド・ギフト・ショップ(Remick Song and Gift Shop)がコロムビア・グラフォノラとコロムビア・レコードを前面に出し、ピッツバーグのジョセフ・ホーン社でも店頭実演が行われていました。

ニュー・エジソン

ポートランド音楽週間の準備を伝える11月26日号『Music Trade Review』では、リード=フレンチ・ピアノ社(Reed-French Piano Co.)がニュー・エジソン(New Edison)とアポロ・リプロデューシング・ピアノ(Apollo reproducing piano)を扱う店として紹介されています。また同記事は、11月5日–12日のパシフィック・インターナショナル・ライヴストック博覧会(Pacific International Livestock Exposition and Horse Show)の記念プログラム広告でも、同社がニュー・エジソンを訴求していたことを記しています。11月の資料上で確認できるエジソン系の動きは、販売店による展示と告知が中心です。

チェイニー

チェイニー・トーキング・マシン社(Cheney Talking Machine Co.)の機器は、11月の一次資料では有力販売店の実演対象として確認できます。ポートランドではジー・エフ・ジョンソン・ピアノ社(G. F. Johnson Piano Co.)がパシフィック・インターナショナル・ライヴストック博覧会の記念プログラムでチェイニーとヴィクトローラの取扱いを告知し、ピッツバーグのジョセフ・ホーン社の「Week of Music」ではチェイニー機が店内各所に展示されました。11月のチェイニーは、専売店の実演と店頭訴求のなかで存在感を示していました。

トーキング・マシン・メン

トーキング・マシン・メン社(Talking Machine Men, Inc.)は11月17日、ホテル・ペンシルベニアで公開舞踏会を開催しました。記事によれば、この催しにはヴィクター、ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Co.)、コロムビアの専属楽団が出演しており、販売業者団体がレコード会社と結びついた楽団を使って一般客向けの販促行事を行っていたことがわかります。

ブラック・スワン

ブラック・スワン・フォノグラフ社(Black Swan Phonograph Co.)については、11月26日号『Music Trade Review』が、法人設立認可を受けたと短く報じています。11月の同時代資料で明確に見える同社の動きは、まず法人格の整備でした。