1909年11月に録音された音楽
1909年11月は、労働運動、産業災害、航空事業、文化の新作発表、議会政治の対立が同時に目立った月でした。11月13日にはアメリカ合衆国イリノイ州のチェリー炭鉱(Cherry Mine)で火災が起こり、259人が死亡しました。11月22日にはニューヨークのクーパー・ユニオン(Cooper Union)でクララ・レムリッヒ(Clara Lemlich, 1886–1982)が総罷業を訴え、衣料産業の大規模争議が始まりました。同じ11月にはウィルバー・ライト(Wilbur Wright, 1867–1912)とオーヴィル・ライト(Orville Wright, 1871–1948)がライト社(Wright Company)を法人化し、航空は実験段階から企業経営の段階へ進みました。11月28日にはセルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninoff, 1873–1943)の《ピアノ協奏曲第3番》がニューヨークで初演され、11月30日にはイギリス貴族院(House of Lords)が財政法案を退け、憲政上の対立がいっそう深まりました。
この月の確認されている録音:0曲
1909年11月の録音に関する情報のまとめ
1909年11月の録音関係で一次資料と近接資料から確認できるのは、実録音日そのものよりも、エディソン系資料における「11月付で初めて告知・掲載された番号群」です。エディソン・アンベロルでは、11月付の掲載番号は1909年12月24日に発売され、1910年1月カタログに載る運用でした。したがって、この月に確実に書けるのは「1909年11月に公表体系へ現れた録音」であり、個々の実録音日が資料上確認できないものは断定できません。
アンベロル325–338の初出
1909年11月付のアンベロル一般リストでは、325番から338番までの番号群が確認できます。ここにはジョン・フィリップ・スーザ(John Philip Sousa, 1854–1932)の行進曲連結盤、ヴィクター・ハーバート(Victor Herbert, 1859–1924)指揮楽団の《ムル・モディスト》関連曲、ビリー・マレイ(Billy Murray, 1877–1954)の流行歌、器楽曲、重唱、寸劇が並び、軍楽・劇場音楽・流行歌・語り物を同一の月次体系で供給していたことが確認できます。
- https://adp-assets.library.ucsb.edu/edison_4m-cyls.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1909-Vol-7.pdf
グランド・オペラ・アンベロルの初出
1909年11月は、エディソンの4分グランド・オペラ盤が初めてリスト入りした月でした。近接資料では、この月に2分グランド・オペラ盤の削除開始も重なったことが明記されており、エディソンが高級オペラ録音の中心を4分盤へ移していく転換点として位置づけられます。同じ資料群では、B150からB177までの番号でオペラ抜粋が確認でき、のちに40000系・30000系・35000系へ再編されていきます。
- https://adp-assets.library.ucsb.edu/edison_4m-cyls.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1909-Vol-7.pdf
スーザ楽団録音の展開
ジョン・フィリップ・スーザ(John Philip Sousa, 1854–1932)関連録音は、1909年9月号で「11月リストに現れる最初の寄与作」として予告され、アンベロルの《The Stars and Stripes Forever》と標準盤の《Powhatan’s Daughter》が示されていました。さらに1909年12月号では、《The Dancing Girl》の説明のなかで、組曲前半の《The Coquette》が11月リスト掲載曲であったことが明記されており、1909年11月がスーザ楽団録音の本格的な月次展開の起点だったことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1909-Vol-7.pdf
- https://adp-assets.library.ucsb.edu/edison_2m-cyls.pdf
メキシコ録音の月次供給
1909年11月号の『Edison Phonograph Monthly』は、メキシコ国民蓄音機会社(Mexican National Phonograph Co.)がメキシコ・シティ(Mexico City)に大きな在庫拠点を持ち、特別なメキシコ向けレコードを常備していたこと、さらにメキシコの地元人材による標準盤444点とアンベロル41点をすでに市場に出し、今後も毎月発行する方針であったことを記しています。実際に11月付アンベロル一覧にはメキシコ・シティ録音の333番《Monte Cristo – Waltz》が含まれており、地域録音が本国の月次供給体系へ組み込まれていたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1909-Vol-7.pdf
- https://adp-assets.library.ucsb.edu/edison_4m-cyls.pdf
