1923年5月に録音された音楽
1923年5月は、政治、経済、技術、娯楽の各分野で転換の重なる月でした。ドイツではルール占領(Occupation of the Ruhr)の長期化とともに通貨価値の下落がいっそう深刻になり、生活と産業の両面に不安が広がりました。イギリスではボナー・ロー(Andrew Bonar Law, 1858–1923)が病気のため首相を退き、スタンリー・ボールドウィン(Stanley Baldwin, 1867–1947)が5月22日に首相となりました。アイルランドでは5月24日に反条約派による武器放棄命令が出され、アイルランド内戦は終結へ大きく動きました。アメリカ合衆国では5月1日にロサンゼルス記念コロシアム(Los Angeles Memorial Coliseum)の建設が完了し、5月2日–3日にはフォッカー T-2(Fokker T-2)が大陸横断の無着陸飛行を達成しました。さらにフランスでは5月26日–27日に第1回ル・マン24時間レースが開催され、自動車耐久競技の新しい象徴が誕生しました。
この月の確認されている録音:0曲
1923年5月の録音に関する情報のまとめ
1923年5月には、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)、コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)、ブランズウィック=バルケ=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Co.)、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)、スター・ピアノ社(Starr Piano Co.)のジェネット・レコード(Gennett Records)、エオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)、グラモフォン社(The Gramophone Company, Limited)、オーケー・レコード(Okeh Records)の動きが確認できます。録音日データからは、流行歌、ダンス音楽、民族系レパートリー、試験録音、実験的ディスク録音、クラシック録音までが並行して進んでおり、同時代業界誌からは販売政策と海外展開の再編も読み取れます。
ビクター
ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)では、1923年5月17日に《Honeysuckle time》の試験録音、5月18日に《Mr. Gallagher and Mr. Shean》、5月23日に《The cootie crawl》が確認できます。5月の同社は、発売用マトリクスと試験録音を並行して扱っており、流行歌や舞台由来の演目を継続的に新規収録していました。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1923-05-17
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1923-05-18
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=MainTalentDisplay&date=1923-05-23
コロムビア
コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)では、1923年5月1日に《Song of the Volga boatmen》、5月4日に《Ritzi Mitzi》、5月14日に《Indiana moon》が確認できます。声楽曲、流行歌、ダンス・オーケストラ物が同月内に並行して録音されており、クラシック寄りの録音と大衆向け商品の両方を維持していたことが分かります。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=MainTalentDisplay&date=1923-05-01
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1923-05-04
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1923-05-14
ブランズウィック
ブランズウィック=バルケ=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Co.)では、1923年5月4日に《Marchéta》、5月12日に《A meidel in die Turen》《Korobuschka》、5月18日に《Jack and Jill medley》が確認できます。さらに1923年5月号の業界誌には「Lightner With Brunswick Co.」の記事が載り、同社が南アメリカ向け事業のためブエノスアイレスに拠点を置く動きを進めていたことも確認できます。5月の同社は、録音制作と海外販売網の拡張を並行していたといえます。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1923-05-04
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1923-05-12
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1923-05-18
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1923-05.pdf
エジソン
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、1923年5月14日に《Nevinny valčík》とともに「Experimental disc recording」と記された実験的ディスク録音が確認でき、5月17日にはカプランズ・メロディスツによる《Ritzi Mitzi (A snappy, peppy ditty)》が見えます。通常録音と実験的ディスク録音が同月に並んでおり、同社が商品供給と技術的試行を同時に進めていたことが分かります。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1923-05-14
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1923-05-17
ジェネット
スター・ピアノ社(Starr Piano Co.)のジェネット・レコード(Gennett Records)では、1923年5月23日に《Arabian dance》と《Hammerdieh march》が確認できます。5月下旬の時点で、同レーベルが中東系題材を前面に出した録音を含む新規マトリクスを動かしていたことが読み取れます。
ヴォカリオン
エオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)では、1923年5月号の業界誌に「Vocalion Record Cut-Out Plan」が掲載され、112タイトルを販売店から返品可能とする整理策が告知されています。これは新録音の情報ではありませんが、同月に同社が在庫構成と販売政策の見直しを進めていたことを示す具体的な動きです。
グラモフォン
グラモフォン社(The Gramophone Company, Limited)では、1923年5月1日に《Symphony no. 6, in B minor》、5月23日に《Det brister en…》が確認できます。少なくともこの月には、同社が大規模クラシック録音と北欧系レパートリーの両方を動かしており、英米市場の流行曲中心とは異なる国際的な録音編成を維持していたことが分かります。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=MainTalentDisplay&date=1923-05-01
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=FirstTakeDate&date=1923-05-23
オーケー
オーケー・レコード(Okeh Records)では、1923年5月付のカタログ掲載として、4861《Barney Google》、4865《Abandonado》、4872《Pua mohala》《Kohala march》が確認できます。ダンス・オーケストラ物とハワイアン物を同月に並べており、都市向け流行商品と民族・地域色のある商品を併売していたことが分かります。加えて、同月の業界誌では販売店向けに需要拡大を前提とした広告が掲載されており、流通面でも積極姿勢が見えます。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/objects/detail/253041/OKeh-4861
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/objects/detail/253053/OKeh-4865
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/objects/detail/253077/OKeh-4872
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1923-05.pdf
